今回は、中小企業の経営者が直面する銀行への対応についてお話したいと思います。 私の会社が長年の優良経営から赤字転落、倒産に至るまでの流れを踏まえながら、その都度銀行の態度がどのように変化していったのか、そして最後に対応のヒントについて書いていきます。

あくまで私の会社に起こったことであり、他の会社あるいは他の銀行で直接的な参考になるかどうか分かりませんが、こういう例もあったという事でご一読ください。 なお、当時のコンサルタントによると私の会社のメインバンクは信じられないほど優しかったそうです。

業績好調だった頃の銀行の反応

私の会社は先代の頃から含めて20年以上の黒字決算で、毎年2割配当するほどの優良企業でした。 その頃お付き合いのあった銀行は3行(メインのA行、サブのB行、3番手のC行)で、どの銀行も競って資金需要のお伺いに来たり、短期借り入れを早めに返済すると連絡したら「困ります!」と悲鳴を上げてくるような状態でした。

赤字が数年続いた時の意外な反応

3年ほど赤字続くとさすがにこれはまずいだろうと、私はかなり不安になっていたのですが、それぞれの銀行の反応は以前と全く変わりませんでした。

今考えると理由は簡単で、当時は赤字であってもまだ財務的には余裕があり、その年に融資してもらった借入金は1年後にキッチリ返済していたのです。 それは毎年の繰り返しでしたから、これを続けられている間は銀行の対応も変化無いはずです。

中小企業の経営者が直面する銀行への対応

返済が滞った時の銀行の変化

財務的に余裕があっても、赤字を続けていけばそのうち資金も底をつきます。 最初に返済の猶予を頼んだのはサブのB行だったと思います。 「何事ですか?」みたいな反応でしたが、初回だったので快諾して頂いたと記憶しています。 3番行にも同様のお願いしたのですが、ここでC銀行は別の反応をしてきました。

C銀行の担当者は一旦支店に持ち帰った後、数日後にやってきて「経営計画書を出してください」と言ってきました。 私は「なんて面倒な奴だ」と思ったのですが、その銀行からもらった経営計画書の雛形に理想的な数字をはめ込んで提出しました。

担当者はまた支店に持ち帰り、後日追加の融資の話をしてきました。 私は、「計画書1枚でそんなに態度が変わるものか」と少し拍子抜けて驚くより呆れたのを覚えています。

※経営計画書の重要性については、また別の記事で詳しく書きます

徐々に厳しくなる銀行の反応

メインのA行に対しても、大きな借入については毎年の借り換え(ローリング)をお願いし、資金繰りをつないでいったのですが、銀行の態度は徐々に厳しくなっていきます。

この頃、各銀行に実績や計画書などを頻繁に出していたのですが、よく聞かれたのが「他行さんは何と言われてますか?」です。 何故そんなに他行の動向を知りたがるのか不思議で仕方ありませんでした。 というか、「あぁ、自分の会社の押し付け合いが始まったんだな」と思ってました。

去っていったサブ行としっかり支えてくれたメイン銀行

いよいよ厳しくなってくると、銀行の反応ははっきりしてきます。 まず3番行であるC銀行は金額も少なかったので、さっさと引き上げていきました。決まり文句の「今回のご融資は本部の許可が下りませんでした」です。 サブのB銀行も、以前は「他行の分もまとめてうちにやらせてくれ」とか言ってたのに、何だかんだで去っていきました。

しかし、メインのA銀行だけは別で、かなりうるさくは言われましたが引き続き融資もしてくれましたし、いろんな相談にも乗ってくれました。 あるセミナーで、銀行はメインを決めてしっかりと付き合うのが大事という話を聞いたことがありましたが、これは本当だなと思いました。

中小企業の経営者が直面する銀行への対応

融資は止まっても倒産の直近まで支えてくれたメイン銀行

その後、メインのA銀行はコンサルタントまで派遣して会社の再建に協力してくれていたのですが、私が大失敗を繰り返してしまい、さすがに融資を打ち切られました。

しかし、それでも何とか頑張って会社を継続していた私に無理な返済を迫るわけでもなく、A銀行はやさしく見守ってくれました。 さらに、公的機関といっしょに会社の再生計画を立ち上げてくれて、私の会社の再建に協力してくれました。

倒産して振り返る銀行との関係で学んだ教訓

メイン銀行の多大なる支援にも関わらず、ついに私は会社を倒産させてしまいました。 本当に不義理をして申し訳なかったと思っています。 しかし、振り返ってみるともっと頼っておくべきだったとう気もしています。 やはり相手は「生殺与奪の剣」を持ったメイン銀行、私はかなり警戒していました。

しかし、融資が止まっているにも関わらず、「何かあったら相談しください」と言われ続けていたのは何だったのか? お金は出ないけど、もっと助けになってくれたのではないか? と、今になって思うのです。

多くの経営者の方もそうかも知れませんが、私は弱みを見せるのが苦手で、特に銀行相手には絶対見せたくありませんでした。 しかし、もう少し頭を柔らかくして自分の悩みを相談できたら結果は変わっていたのかもしれません。 もっとA銀行に頼るべきでした。

今回は落ちていった私の会社とその時の銀行の反応についてお話しました。 銀行というのは自分が考えるよりもはるかに貸出先の会社のことを知りません。 資金繰りだけでなく経営全般についても、して欲しいことはしっかりと伝えることが大切です。

さて、ここまで読んでいただいて有難うございました。 

あなたの参考になりますように。

参考リンク