記事について
この記事は、実際に30名の従業員を抱えた会社の破産を経験した経営者による個人的な実体験と、その後悔をまとめたものです。インターネット上の法律情報では語られない、破産現場の生々しい実務をお伝えします。
破産手続きや制度は個別のケースや時期によって大きく異なるため、具体的な法的判断や手続きについては必ず弁護士などの専門家にご相談ください。私と同じ過ちを繰り返さないための、一つの参考事例としてご活用ください。
【破産現場の現実】なぜ経営者は未払賃金をすぐに払えないのか?
1. 従業員への未払金は「時間」ではなく「配当順位」が優先
「従業員の給与は最も優先される」という言葉は真実ですが、私が誤解していたのは、これが「支払いの時期」ではなく「配当の際の順番」だということです。破産後、「すぐに現金で払える」と思い込んでいた私に突きつけられた現実は、あまりにも重いものでした。
すべての債務と資産の計算が終わるまで、どれだけ優先度が高くても配当は実行されません。私のケースでは数カ月を要し、一般的には1年以上かかることもあります。従業員の生活を考えたとき、この時間の長さは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
2. 恐怖を避け続けた代償:営業停止2週間前の相談

経営者たるもの、「破産」なんて考えたくないものです。毎日恐怖が背後から迫ってきているのに、それに向き合うのは本当に困難でした。
私が弁護士に相談したのは、営業停止のわずか2週間前でした。この判断の遅れが、後に未払賃金の対応や従業員への配慮を大きく後手に回し、多くの問題を引き起こすことになります。
【実体験】未払賃金で直面した想定外の「実務」と負担

私の会社では従業員30人(パートさんが多め)で、未払賃金の総額は約250万円でした。この支払いを巡る実務は、想像以上に複雑でした。
1. 立替払制度で3ヶ月以上かかった「想像以上の手間」
日本には「未払賃金立替払制度」がありますが、この手続きに私のケースでは3ヶ月以上かかる見通しです(※記事執筆時点)。
その原因は、普段の経営では許されていた「だいたい」の処理が、法的手続きでは一切通用しなかったことにあります。
- 通勤手当や役職手当の「日割り計算」が、従業員一人ひとりについて必要になる。
- 便宜上支払っていた「手当」について、管財人から「実質的に基本給ではないか?」と性質を細かく追求された。
- 有給休暇の合計日数が所定日数を超えているなど、給与計算の矛盾を一つ一つ説明する必要があった。
賃金台帳や出勤簿、タイムカードなど一式を提出して精査されるため、普段から賃金管理を正確に行うことの重要性を痛感しました。
【最も重い後悔】解雇予告手当500万円という想定外の負担

未払賃金よりも、私をより苦しめたのが解雇予告手当です。
1. 1ヶ月分の給与という「追加の負債」
突然の解雇の場合、会社は従業員に1ヶ月分の給与を別途支払う義務があります。私の会社では、これが約500万円という巨額な負債として発生しました。
未払賃金250万円に加えて、解雇予告手当500万円。合計750万円は、破産直前の会社には到底準備できない金額でした。
2. 「優先順位」を誤解したことの代償
「従業員の給与は最も優先される」という言葉から、解雇予告手当もすぐに支払われるものだと思い込んでいました。しかし、解雇予告手当は未払賃金とは異なり、配当の優先順位がそれほど高くありません。
大きな負債を抱えて破産する中で、解雇予告手当まではなかなか支払えないのが実情です。結果として、この手当は従業員に満足に支払うことができず、今でも大きな後悔として心に残っています。
【経営者への切実なメッセージ】私と同じ後悔をしないために

1. 従業員への後手後手の対応が招いた混乱
営業停止の朝、従業員に破産を伝えた際、「給料はいつ出るのか?」「雇用保険の手続きは?」といった質問に、私はまともに答えることができませんでした。
「3週間くらいで未払いの給与は払える」と間違った説明をしてしまい、後から弁護士に確認して一斉メールで訂正する羽目になりました。このような後手後手の対応は、従業員の不安を更に大きくし、信頼関係を完全に崩してしまいます。
2. 専門家選びの致命的なミス
もっと早く、できれば2ヶ月前には相談すべきでした。さらに、相談先は大学の先輩のつながりというだけで、企業破産の実務経験が豊富か、労働問題に詳しいかを確認していませんでした。
普段お世話になっていたコンサルタントや税理士では、生々しい破産手続きの現場経験は限られています。会社を活かすか潰すかという場面では、その分野が専門の弁護士に相談しなければ、詳しいアドバイスは期待できません。
3. 失敗から学んだ「最悪のシナリオに備える勇気」
今振り返ってみて正直に思うのは、「今戻ったとしても、また『何とかなるのでは?』と苦心惨憺して同じ道をたどる気がする」ということです。これが経営者の性なのかもしれません。
だからこそ、経営が安定している時に「最悪のシナリオ」を想定し、知っておけば取れる手段を広く知っておくことが重要なのです。従業員と自分自身を守る第一歩は、「知ること」から始まります。
【いますぐ行動】私と同じ後悔をしないために
この記事を読んだあなたが、今、資金繰りに不安を抱えているのであれば、いますぐ行動を起こしてください。
未払賃金や解雇予告手当という重い責任を負わないために、そして、従業員の生活を守るために、私が破産を経験したからこそわかる具体的な回避策をまとめました。
【必読】経営者が知っておくべき破産回避のための具体的なステップと対策
万が一の倒産に備えて:関連する手続きも確認しておきましょう
倒産時の未払い賃金問題に適切に対応するためには、以下の要素も不可欠です。
- 立替払制度の活用: 未払い賃金が発生した場合、国の立替払制度を利用できます。制度の詳細や申請手続きについては、立替払制度についてをご覧ください
- 適切な税務処理: 未払い賃金が発生した際も、源泉徴収票の発行は必要です。税務書類の作成と注意点については、源泉徴収票の発行についてで解説しています
- 雇用保険の手続き: 従業員の生活を総合的にサポートするため、失業給付の手続きも重要です。会社都合となる離職票の迅速な手続きは、離職票の手続きについてをご確認ください
具体的な法的判断や手続きについては、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。
資金繰りの選択肢を知っておくことの大切さ
債権者集会を経験して改めて思うのは、「もっと早く手を打てなかったのか」ということです。
私は当時、資金繰りに困った際にファクタリングという仕組みをよく知らず、結果的にクレジットカードのキャッシングに頼ってしまいました。
もしその時に今の知識があれば、違う選択をしていたかもしれません。
もちろん、ファクタリングが万能の解決策ではありませんし、手数料も決して安くありません。しかし「選択肢として知っておく」ことは重要だと思います。
同じように資金繰りで悩む経営者の方に向けて、私が後から調べた情報をまとめた記事があります:
👉 元経営者が選ぶファクタリング7社比較|資金繰りで悩んだ元経営者が後から調べた情報まとめ
⚠️ この記事も専門家の監修は受けていません。利用を検討される場合は、必ず税理士・会計士等の専門家にご相談ください。
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