破産を決意した社長が最後に頼った相談相手の役割
私について: 製造業で20年経営し、最終的に破産を選択した元社長です。10年間同じコンサルタントと契約し、資金繰り改善から最後の破産手続きまで支援を受けました。この実体験が、経営危機に直面している方の判断材料になれば幸いです。
なぜ最初に連絡したのは「コンサルタント」だったのか
破産を決意したその日、私がまず電話したのは家族でも銀行でもなく、10年契約しているコンサルタントでした。
正直に言うと、もはや助けてもらおうという気持ちはありませんでした。「状況を共有できる人がほしい」という気持ちが一番強かったのです。
従業員に話せば動揺と混乱を招く。家族に話せば感情的になって冷静な判断ができなくなる。銀行に話せば即座に資金引き上げのリスクがある。
そんな中で、経営者の立場を理解しつつ、感情に左右されずに客観的に話を聞いてくれる相手として、コンサルタントの存在がありました。

最後の相談:「延命提案」を断った日の重い決断
データで示した「できない理由」
破産を決意して連絡した時、コンサルタントは驚きつつも「何とか維持させる方法はありませんか?」と会社継続を提案してきました。
私も心の底では同じ気持ちでしたが、用意した資金繰りデータで現実を説明しました:
- 今月:無理をすれば乗り越えることは可能
- 来月:物理的に無理
- 仮に来月乗り越えても:昨年のデータから見て、その先はもっと無理
「ここを超えてもまた同じことの繰り返し」—そう感じて、私の気持ちは萎えてしまっていました。
長年の付き合いだからこその感情
納得してもらった時の彼の反応は今でも忘れられません。
「そうですか〜、まぁ社長がそう判断されるのであれば…」 「いや、そうですか〜」
何度もそう繰り返していました。長年付き合った会社の終わりを見届ける、お互いにとって本当に残念な瞬間でした。
破産手続きで見えた「経験値」の重要性
専門外でも「経験上」のアドバイスが的確
彼は倒産専門のコンサルタントではありませんでしたが、「経験上こうです」というアドバイスが非常に的確でした。
具体的には:
- 自己破産は不可避であること
- 自宅の維持も困難になること
- 覚悟すべき現実的なレベルの明確化
これらの情報により、私は感情的な期待を持たずに、現実と向き合う準備ができました。
最終的に「早めに弁護士に相談しましょう」という結論に至り、長年の付き合いは終了しました。
私の気持ち: 「会社の最後を看取ってもらった」という感謝の気持でいっぱいです。
把握しておくべき、コンサルタントの「得意分野」と「限界」

【大成功】資金調達・銀行交渉での具体的サポート
銀行交渉では「質問事項の準備」が決定打
最も助かったのは、銀行との交渉前に具体的な質問事項を一緒に整理してくれたことです。
経営者は感情的になりやすく、銀行員の前では「何とかお金を貸してください」と懇願モードに入りがちです。しかし、コンサルタントが事前に整理してくれた質問事項により、論理的で建設的な話し合いができました。
具体例:
- 「現在の与信枠の見直し可能性はありますか?」
- 「保証協会付き融資の追加検討はいかがでしょうか?」
- 「返済条件変更(リスケ)の手続きについて教えてください」
現実的な資金ルート提案の価値
理想論だけでなく、その場しのぎの現実的な提案もしてくれました。
- 恒久的な借入先(政府系金融機関など)の紹介
- カードキャッシングなどの緊急資金調達法
- 支払いを遅らせる優先順位付け
特にカードキャッシングの提案は、他のコンサルタントでは言えない「生々しい現実論」でした。綺麗事だけでは経営危機は乗り越えられないことを理解していました。
【限界あり】営業戦略・売上向上のアドバイス
一方で、売上を上げるための営業戦略アドバイスは正直「ピントがズレていた」というのが実感です。
資金繰りのプロであっても、業界特有の営業手法や顧客心理については、やはり現場の感覚に勝るものはありませんでした。
教訓: コンサルタントにも得意・不得意がある。資金危機の時は「資金のプロ」に相談すべき。営業戦略は別の専門家に相談するか、社内で検討する方が現実的。
利害関係のない相談相手の価値
社内では得られない「本音の相談相手」
コンサルタントと契約していて最も精神的に救われたのは、純粋にこの会社を良くするためにはどうするか?を一緒に考えてくれたことです。
従業員の場合、どうしても以下のような「保身」が入ります:
- 「でも、それをやったら私の給料は…」
- 「余計なことを言うと仕事が増える…」
- 「責任を追求されるのは嫌だ…」
コンサルタントにはそういった利害関係がないため、会社にとって最適な判断は何か?だけを考えて答えを出してくれました。
経営者の孤独が深まる現実
経営が厳しくなってくると、経営者の孤独は本当に「半端ない」レベルになります。
- 従業員の給料を上げられない
- 経費削減をうるさく言わなければならない
- 将来への不安を表に出せない
社内では誰にも弱音を吐けない状況で、「同じ目線で話せる相手」がいることの価値は、実際に経験した人でないと分からないでしょう。
なので、会社が危機的状況になる前から適切なコンサルタントとお互いの信頼を深めておくことをお勧めします。

【実践編】経営危機で頼れるコンサルタントの探し方
1. 「資金繰りの実務経験」を重視する
営業戦略や事業戦略よりも、まず資金ショートを防ぐことが最優先です。
確認すべきポイント:
- 銀行交渉の同席経験はあるか?
- リスケジュール交渉の実績は?
- 政府系金融機関とのネットワークはあるか?
- 緊急時の資金調達手段をどれだけ知っているか?
2. 「人間性」も重要な選定基準
10年間信頼できた最大の理由は、純粋に会社のことを考えてくれる姿勢でした。
見極めポイント:
- 初回相談で「絶対に大丈夫」などの根拠のない楽観論を言わないか
- 現実を受け入れつつ、建設的な提案をしてくれるか
- 契約を急がせず、まず状況把握に時間をかけるか
- メンタル面でのサポートも視野に入れているか
3. 費用対効果を考慮した段階的活用
初期段階では公的制度を活用:
- 商工会議所の専門家派遣制度(低コストまたは無料)
- 中小機構の派遣事業
- 経営改善支援センターの相談
深刻化した段階で専門コンサルタントと契約:
- ある程度の費用をかけても、継続的なサポートを受ける
- 精神的支柱としての役割も期待する
コンサルタントに求められる2つの役割
私の体験から、経営危機時のコンサルタントには以下の2つの役割が必要です:
1. 専門知識による「実務サポート」
- 資金調達ルートの提案
- 銀行交渉のサポート
- 法的手続きのアドバイス
2. 孤独な経営者の「精神的支柱」
- 利害関係のない客観的視点
- 同じ目線で話せる相談相手
- 現実を受け入れるためのメンタルサポート
両方を兼ね備えたコンサルタントを見つけることが、経営危機を乗り越える(または適切に終息させる)ための最重要ポイントです。
まとめ:経営危機は「一人で抱え込むもの」ではない
経営者は本来孤独なものですが、危機の時にまで一人で抱え込む必要はありません。
適切なコンサルタントは、専門知識だけでなく、経営者の心の支えにもなってくれます。私の場合、最終的には破産という結末でしたが、10年間のサポートがあったからこそ、冷静な判断ができました。
もし今、経営危機に直面している方がいるなら: まずは商工会議所などの公的機関に相談し、必要に応じて信頼できるコンサルタントとの長期的な関係構築を検討してください。
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