- 重要な免責事項
- この記事を書いた人
- なぜこの記事を読むべきか:製造業で15期連続赤字、それでも10年延命できた理由
- 全体の流れ(時系列):破産決意から債権者集会までのロードマップ
- 破産を決意するまで:「翌月は確実にアウト」という現実
- 【破産決意の3日後】弁護士相談と準備期間
- 【2週間後】Xデー:従業員30人への告知
- 【告知後1週間】法的に宙ぶらりんな空白期間
- 【申し立てから9日後】管財人面談:何を聞かれたか?
- 【Xデー直後から約1ヶ月】従業員30人分の離職手続き
- 【開始決定後約2ヶ月間】管財人とのやり取り:「ほぼ毎日」の問い合わせ
- 債権・債務の洗い出し作業:地道な帳簿との格闘
- 資産処分の現実:製造設備は売れるのか?
- 【約3ヶ月後開催予定】債権者集会に向けた準備
- 体験者としての率直な感想:「申し立て=終了」ではない
- 関連記事:倒産直後に気をつけること【財務編】
- 最後に:同じ状況に直面している製造業の経営者の方へ
重要な免責事項
この記事は筆者の個人的な体験談であり、決して法的アドバイスとして提供するものではありません。
破産手続きは複雑な法的手続きであり、地域、事案の規模、弁護士や裁判所の運用方針により、その手順や期間は大きく異なります。 実際に検討される場合は、必ず破産専門の弁護士にご相談ください。
本記事の情報に基づいて行動された結果について、筆者及びサイト運営者は一切の責任を負いかねますので、あくまで一個人の実体験の記録としてお読みください。
この記事を書いた人
業種: 製造業の元経営者
経営期間: 約20年
会社規模: 最盛期は従業員約100人・売上約19億円、破産時は従業員約30人・売上約3億円
経験: 15期連続赤字、8年間の債務超過、10年間の借入ローリング(借り換え)を経て破産申立て
製造業の中堅企業を経営していましたが、業界の構造的不況と経営力不足により、約20年かけて売上が約6分の1まで縮小。最終的に資金ショートで破産に至りました。同じような状況に直面する方の参考になればと、この体験記を記録として残します。
なぜこの記事を読むべきか:製造業で15期連続赤字、それでも10年延命できた理由
私の会社は15期連続赤字という極めて深刻な状況にありながら、約10年間も事業を継続できました。なぜそれが可能だったのか、そして最終的になぜ破産に至ったのか。
この記事では、以下のような「法律の専門家には書けないリアルな実務」をお伝えします:
- 資金繰り表で「翌月アウト」を確認した瞬間の決断
- 従業員30人に「本日で営業停止」と告げた日の実際
- 破産申立て後、管財人から「毎日」問い合わせがあった2ヶ月間
- 社会保険労務士と進めた30人分の離職手続きの煩雑さ
- 「もっと早く決断すべきだった」という経営者としての後悔
数字で見る私の破産体験:
- 売上:19億円 → 3億円(約6分の1に縮小)
- 従業員:約100人 → 約30人
- 赤字期間:15期連続
- 債務超過期間:約8年
- 借入ローリング期間:約10年
- 負債総額:約4億円
全体の流れ(時系列):破産決意から債権者集会までのロードマップ
私のケースにおける大まかな流れは以下の通りでした:
時期 | 出来事 |
---|---|
決意当日 | 破産決意(資金繰り表で「翌月アウト」を確認) |
3日後 | 弁護士相談・Xデー設定 |
2週間後 | Xデー(営業停止・債権者通知・従業員30人への告知) |
約3週間後 | 裁判所への正式申し立て |
約1ヶ月後 | 破産手続開始決定・管財人面談 |
1〜3ヶ月 | 管財人による調査・資産処分準備(ほぼ毎日の問い合わせ) |
約3ヶ月後 | 債権者集会(予定) |
※この期間はあくまで私のケースです。実際の期間は事案により大きく変動します。
破産を決意するまで:「翌月は確実にアウト」という現実

私の会社は15期連続赤字、最盛期の売上19億円から3億円まで縮小し、最終的に資金ショートで破産に至りました。倒産に至る詳しい経緯については別記事で詳しく書いていますが、簡単に言うと「来月の資金繰りがもう無理」という客観的な状況での決断でした。
決断の瞬間:資金繰り表が突きつけた現実
決意の瞬間は、自分で作成した資金繰り表を見て以下の現実を突きつけられた時でした:
- 当月:ギリギリ資金確保可能
- 翌月:資金不足発生の可能性
- 半年後:確実な資金ショート
特に深刻だったのは、製造業特有のキャッシュフローのムラを考慮しても、最も資金繰りが改善されるべき月においてさえ、この厳しい状況であったことです。つまり、季節要因による改善も見込めない状態でした。
コンサルタントからは延命策の提案もありましたが、私自身の判断として客観的データに基づいて延命は無意味と判断しました。
経営者として今振り返る後悔:「もっと早く決断すべきだった」
この記事を書いている今、冷静に振り返ると、より早期の段階での抜本的対策(事業転換、M&A等)の検討余地があったと分析しています。
約10年間の借入ローリング(借り換え)期間、約8年間の債務超過期間——この間、私は「なんとかなる」「来期は改善する」と信じて延命を続けていました。しかし結果的には、従業員や取引先への影響を大きくしただけだったかもしれません。
これから同じ状況に直面する経営者の方へ: 客観的なデータが「詰んでいる」と示しているなら、早期の決断が関係者への影響を最小化することもある——これが私の経験から得た教訓です。
【破産決意の3日後】弁護士相談と準備期間
※この期間と流れは、弁護士との契約内容や事案の緊急度により大きく異なります。
知人の弁護士に相談したのは、破産を決意してから3日後のことでした。この時点で「Xデー」(営業停止日)を2週間後に設定しました。この2週間で、弁護士の指示に従い、破産申し立ての資料準備を極秘裏に進めることになりました。
従業員に気づかれないための工夫と罪悪感
準備期間中は従業員に気づかれないよう、支払いタイミングの調整や資料整理を密かに進めました。「最近、支払いを変えるんですね」と従業員に言われた時は、「その方が良いと思ってね」と答えて乗り切りましたが、内心はかなり辛いものがありました。
約30人の従業員、その中には10年以上一緒に働いてきた仲間もいます。彼らに何も告げずに準備を進める2週間は、経営者として最も辛い期間の一つでした。
【2週間後】Xデー:従業員30人への告知

営業停止日の詳しい様子は別記事で書いていますが、午前10時に全従業員約30人を集めて「本日をもって営業を停止します」と告知しました。
同時進行で弁護士が裁判所への破産申し立て手続きを行い、債権者への通知をFAXで一斉送信しました。この日は本当に慌ただしく、まさに戦場のような一日でした。
「本当に何が起きたか」:Xデー当日の実際
法律の専門書には「営業停止日には従業員に告知し、債権者に通知する」と簡潔に書かれていますが、実際には:
- 従業員の驚き、怒り、涙
- 「今月の給料は?」「失業保険は?」という質問の嵐
- 債権者からの電話が鳴り続ける電話
- 弁護士との連絡調整
- 現場の混乱の収拾
これらが同時多発的に発生します。心の準備をしていても、現実の混乱は想像を超えていました。
【告知後1週間】法的に宙ぶらりんな空白期間
※この空白期間は、弁護士や裁判所の運用、事案の複雑さによって有無や期間が異なります。
Xデー当日は従業員や債権者への「告知・通知」であり、まだ裁判所への申し立ては行っていません。裁判所への正式な破産申し立ては、私のケースではその1週間後に行われました。
法的に「営業中」なのに店は閉まっている矛盾
この期間中は法的に宙ぶらりんな状態で、みんなには破産すると伝えたものの、法的にはまだ「営業中」という不思議な状況でした。実際は店を閉めているのに、法的手続きは何も始まっていないという、本当に中途半端な1週間でした。
この間に従業員の離職手続きを進めましたが、社会保険労務士と連携しながらの作業で、想像以上に煩雑でした。
【申し立てから9日後】管財人面談:何を聞かれたか?
※開始決定までの期間も、裁判所の混雑具合や提出資料の完成度により変動します。
裁判所への正式申し立てから9日後、「破産手続開始決定」が下りました。同日、破産管財人との初回面談が設定されました。
管財人面談で本当に聞かれたこと
申し立ての際に弁護士にはあらかた資料を渡してあったので、そこから管財人に情報はスライドしていました。初回面談では一から説明するというよりも、以下のような内容の確認作業が中心でした:
- 会社設立からの沿革(なぜ製造業を始めたのか、最盛期の状況など)
- 倒産に至った経緯の詳細(15期連続赤字、売上縮小の背景)
- 主要な取引先との関係(特に大口債権者について)
- 資産の詳細(場所、状況、権利関係——製造設備、土地建物など)
- 帳簿の保管状況(過去何年分が揃っているか)
管財人は冷静かつ客観的に質問してきます。責められているわけではありませんが、会社の「終わり」を確認する作業であることに変わりはなく、精神的には辛い面談でした。
【Xデー直後から約1ヶ月】従業員30人分の離職手続き

※これらの手続きは専門的な知識が必要です。必ず社会保険労務士などの専門家のサポートを受けてください。
管財人とは別に、社会保険労務士との手続きも並行して進めました。Xデー直後から約1ヶ月間、本当にバタバタした日々でした。
主な手続き
- 健康保険証の喪失届
- 離職票の作成
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 源泉徴収票の発行
- その他従業員関連の各種手続き
従業員約30人分の手続きを一斉に行うため、書類の量も膨大でした。破産手続きと並行して進めるには相当な負担でしたが、従業員の生活に直結する重要な手続きなので、社会保険労務士の指導の下で確実に進めました。
「こうすればよかった」:事前準備の重要性
振り返ると、Xデー前にもう少し従業員情報を整理しておけば、この作業はもっとスムーズだったはずです。特に:
- 過去の住所変更履歴
- 家族構成の最新情報
- 雇用保険の加入履歴
などは、事前にデジタル化・整理しておくべきでした。破産を検討している経営者の方は、従業員情報の整理を早めに始めることをお勧めします。
【開始決定後約2ヶ月間】管財人とのやり取り:「ほぼ毎日」の問い合わせ

※管財人による作業の期間や内容は、事案の規模、資産・負債の複雑さにより大きく異なります。
ここからは管財人が債権者集会に向けて資料を作ったり、資産を売却したりする作業が本格化しました。
申立時に弁護士に渡していた主な資料
- 仕入先元帳
- 得意先元帳
- 銀行の通帳(またはそれに類するもの)
- 未払費用の請求書
- 売掛伝票
- 賃金台帳
- タイムカード
- 出勤簿
- その他各種帳簿類
「破産申立て後の方が忙しい」という現実
しかし、これらの資料はまだまだ不備が多く、管財人の作業は想像以上に大変そうでした。約2ヶ月間、管財人から毎日のように電話やメールで問い合わせがあり、私も資料探しや追加説明に追われました。
「この取引は何ですか?」
「この資産はどこにありますか?」
「この契約の詳細は?」
「この設備の購入時期と減価償却は?」
など、過去数年分の取引について一つ一つ説明が必要でした。破産申立て後の方が忙しいという現実を痛感した期間でした。
製造業特有の複雑さ: 特に製造設備の資産価値の算定、原材料在庫の評価、進行中の受注案件の処理など、製造業ならではの複雑な問題が多く、管財人とのやり取りは想像以上に長期化しました。
債権・債務の洗い出し作業:地道な帳簿との格闘
管財人との引き継ぎと並行して、債権・債務の確定作業も進めました。各債権者から提出される「債権届出書」と、自社の帳簿を突き合わせて正確な金額を確定していきます。
この作業で意外な発見もありました
- 利息の計算違いで金額に差異があるケース
- 記録にない古い取引の存在
- 逆に先方の計算ミスを発見することも
「破産」というと派手なイメージがありますが、実際は帳簿や伝票とにらめっこする非常に地道な事務作業が延々と続きました。
資産処分の現実:製造設備は売れるのか?

債権・債務がある程度固まってくると、資産の処分方法を検討する段階に移ります。私の会社の場合、換価対象は土地、建物、製造設備、備品、商品など多岐にわたりました。
製造業特有の資産処分の難しさ
全てをまとめて買ってくれる業者などいないため、管財人は上手な切り分けをして、それぞれを廃棄せずに換価できる方法を模索していました。
特に製造設備については、専門性が高く汎用性が低いものが多く、買い手を見つけるのが困難でした。また、商品については経時で価値が変化するものだったため、なおさら慎重な検討が必要でした。
債権者集会までには、各資産の処分方向性が示せるのではないかという見通しでした。
【約3ヶ月後開催予定】債権者集会に向けた準備
債権者集会の日程は、破産申し立てから約3ヶ月後に設定されました。それまでに債権・債務の確定、資産売却の方針決定、配当見込みの算出などを完了させる必要があります。
この期間中、管財人との打ち合わせは設備や商品の処分についてが中心でした。日々、管財人からの問い合わせ対応や資料探しに追われ、非常に実務的で忙しい毎日が続いていました。
体験者としての率直な感想:「申し立て=終了」ではない
破産手続きは、私自身の経験では想像していたよりもはるかに複雑で時間のかかるものでした。
精神的には「一段落」、でも実務は「本番開始」
弁護士からは「管財人が決まれば一段落ですよ」と言われていて、確かに精神的には中途半端な状態から抜け出し、一歩前に進んだ感覚はありました。メインプレイヤーが自分ではなく管財人に移ったという点も、大きな変化でした。
しかし現実には、「申し立て=終了」ではありません。そこから本格的な作業が始まりました。特に管財人とのやり取りは約2か月間ほぼ毎日のように続き、破産申し立て後の方がむしろ忙しいと感じたほどです。
専門家に任せられた安心感はありつつも、この期間は精神的にも体力的にも非常にハードな日々となりました。
製造業の経営者として後悔していること
最後に、製造業の経営者として振り返ると、以下の点をもっと早く実行すべきだったと後悔しています:
- 事業転換の検討:業界の構造的不況が明らかになった時点で、製造品目の転換やM&Aを真剣に検討すべきだった
- 固定費削減のスピード:従業員100人から30人への削減に約20年かかったが、もっと早く決断すべきだった
- 客観的データの重視:「来期は改善する」という希望的観測ではなく、データに基づいた冷静な判断をもっと早くすべきだった
同じ製造業の経営者の方で、業績不振に悩んでいる方がいたら、ぜひ早期の決断をお勧めします。延命が必ずしも正解ではありません。
関連記事:倒産直後に気をつけること【財務編】
※以下の各記事も、本記事と同様にあくまで筆者の体験談です。
破産手続きの各段階で、特に注意が必要な財務実務について詳しく解説しています:
私の会社が破産するまで|15期赤字を耐えた製造業の最期
なぜ15期連続赤字でも10年間延命できたのか?資金調達の変遷、債務超過の実態、最終的な破綻メカニズムを客観的データに基づいて分析しています。
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売掛金管理について
営業停止当日の売掛金管理で犯した私の失敗と、事前に準備すべきだった教訓を公開しています。
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破産手続き前の資金移動について
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破産管財人との面談について
破産手続きの中で最も重要な管財人面談について、準備すべき資料と私が感じた当日の雰囲気をお伝えします。
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最後に:同じ状況に直面している製造業の経営者の方へ
この体験談が、同じような状況に直面している方、特に製造業で業績不振に悩む経営者の方の参考になれば幸いです。ただし、繰り返しになりますが、これはあくまで一個人の体験談です。
破産を検討されている方へ
- 必ず破産専門の弁護士に相談してください
- 地域や事案により手続きは大きく異なります
- 一人で抱え込まず、家族や専門家に相談を
- 時間が経つほど選択肢は少なくなります
- 「来期は改善する」という希望的観測より、客観的データを重視してください
皆さんがこのような体験をしなくて済むことを心から願っています。しかし、もし同じような状況に直面した際は、一歩ずつ確実に前に進んでいくことが大切です。
最終更新日:2025年10月
※この記事は2025年の筆者の体験に基づいて記載しており、法改正や制度変更により内容が変わる可能性があります。最新の情報については、必ず専門家にご確認ください。
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※個人の感想です。効果には個人差があります。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
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