私はかつて、戦前創業の老舗製造業を引き継ぎ、20年以上経営に携わってきました。今回は「資金繰り表とは何か?」というテーマで、自身の失敗と学びをもとに、中小企業経営者に役立つ考え方や作り方をお伝えします。
資金繰り表なんて見たこともない…
そんな方にこそ読んでいただきたい、実務と現場に即した内容です。

資金繰り表とは何か?
資金繰り表とは、会社の現金収支を時系列で把握するための表です。ざっくり言えば、「今月、ウチは大丈夫か?」を見える化するためのもの。融資を受ける際に銀行から提出を求められることも多く、経営の要とも言えます。
私自身、業績が落ちるまでこの存在すら知りませんでした。銀行から「資金繰り表を出してください」と言われたときは、本当に焦りました。
2種類の資金繰り表
月次資金繰り表
- 月単位で収支と月末残高を予測する基本形。
- 通常は12ヶ月分を作成します。
日繰り表(ひぐりひょう)
- 日単位で1ヶ月の資金の出入りを記録。
- 資金繰りが逼迫すると、銀行からこちらの提出を求められることもあります。

ひな型を鵜呑みにした失敗
経理担当者に丸投げした結果…
当時の私は経理にノータッチで、資金繰り表は経理担当者に丸投げしました。ところがその担当者も「初めてです」とネット検索で出てきた税理士事務所のひな型をそのまま使用。
複雑すぎるひな型の問題
あの表は業種に合わせた細かい項目がびっしり並んでおり、私も担当者も何が何だか分からなくなる始末…。数年にわたって、わけの分からない表と格闘する羽目になりました。
資金繰り表を作る本当の目的
- 資金ショートの予兆を見つける
- 投資や借入のタイミングを見極める
- 支払の優先順位を決める
- 銀行との信頼関係を築く
しかし、経理担当者は予測を一切書きたがらず、実績だけを記入。「外れたら責任問題になる」と言わんばかりでした。そこで私は、未来の予測だけ自分で作ることにしたのです。経理と社長のちぐはぐ分業…。今思えば非効率そのものでした。

私がたどり着いたシンプル資金繰り表
経理担当が退職してから、私が経理を兼務することになり、ようやく自分の頭で分かる資金繰り表を作ることができました。
実際のフォーマット(5日単位)
日付 | 1日 | 5日 | 10日 | 15日 | 20日 | 25日 |
---|---|---|---|---|---|---|
売掛入金Aチーム | ||||||
売掛入金Bチーム | ||||||
合計(収入) | ||||||
買掛支払いAチーム | ||||||
買掛支払いBチーム | ||||||
人件費 | ||||||
その他経費 | ||||||
税金・社保 | ||||||
利息 | ||||||
合計(支出) | ||||||
繰越残高 | ||||||
当月残高 |
ポイント
- 毎日は面倒なので5日ごとに集計
- 項目は必要最低限に
- 税金や利息は後から追加で分離
この形式で銀行に提出しても、一度もNGを出されたことはありませんでした。要は、「自分が理解できているか」が重要なのです。
経営に活かすポイント
- 正確さより継続性:続けられなければ意味がない
- 肌感覚の見える化:資金の流れを日々実感する
- 予測の習慣化:「このままいけばどうなるか?」を常に意識
私が事業停止を決断したのも、この表を見て現実を突きつけられたからでした。
まとめ:見える化の第一歩を
資金繰り表は、経営の不安を「数字で見える化」するためのツールです。どんなにシンプルでも、続けることが何より大切。
「今月は大丈夫か?」を自分の言葉で説明できるようになれば、経営の舵取りがグッと楽になります。ぜひ、自分仕様の資金繰り表をつくってみてください。
著者プロフィール
こいでのぼる。戦前創業の中小製造業の3代目。取引先の撤退で経営難に陥り、法人破産と自己破産を経験。現在はその実体験をもとに、中小企業経営者向けの情報を発信中。
冷たさが、今日のストレスを流してくれる。
デスクで手軽にアイスカフェタイム。6種の味で気分もリセット。
コメント