中小企業M&Aの現実と落とし穴|90年企業経営者の体験談から学ぶこと

経営の困難に直面するビジネスマンのイメージ 経営・資金繰り

はじめに|この記事について重要なお知らせ

【重要な注意事項】 この記事は、一個人の体験談であり、専門的なアドバイスや一般的な指針を示すものではありません。経営判断や法的手続きについては、必ず以下の専門家にご相談ください:

  • 弁護士(法的手続きについて)
  • 公認会計士・税理士(財務面について)
  • 認定事業再生士・経営コンサルタント(事業再生について)

相談先機関:

  • 中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 各地の弁護士会 法律相談
  • 商工会議所 経営相談

私は、創業90年を数える地方の製造業を経営していました。従業員約40名、最盛期には年商19億円を誇る地域の老舗企業でしたが、最終的には破産という結末を迎えました。

この体験談が、同じような状況で悩まれている経営者の方に「一つの事例」として何かの参考になれば、また専門家への相談を検討するきっかけになればと思い、当時を振り返ってお話しします。

ただし、これはあくまで「私のケース」であり、業種・規模・地域・時代背景など、様々な条件によって状況は大きく異なることを改めて強調させていただきます。

私の会社の状況|特殊な背景と条件

会社概要(当時)

  • 業種:製造業(部品製造)
  • 創業:約90年前(地域の老舗)
  • 所在地:地方都市
  • 従業員数:約40名
  • 売上推移:最盛期19億円→4億円まで減少
  • 負債総額:3億円以上
  • 時期:コロナ前(2010年代後半)

業界の状況

当時、私たちの業界は全体的に厳しい状況でした。同業他社の倒産も相次いでおり、個社の問題というより業界構造の変化が背景にありました。地方の製造業という特殊性もあり、一般的なサービス業などとは事情が大きく異なっていたと思います。

地方銀行からのM&A提案|「もう後がない」と感じた瞬間

銀行との重要な話し合いの様子

銀行からの通告

ある日、メイン銀行(地方銀行)の担当者から呼び出されました。内容は以下のようなものでした:

  1. 融資の継続は困難
  2. M&A仲介業者を通じた事業譲渡を検討してほしい
  3. 社長は経営から退くこと
  4. 負債は大幅にカットする
  5. 連帯保証人として自己破産の可能性

当時の私は「まだ何とかなる」と思う気持ちと、「もう限界かも」という不安が入り混じっていました。90年続いた会社を自分の代で終わらせることへの責任感と恐怖で、正直、冷静な判断ができない状態でした。

【個人的な感想】 今思えば、この段階でもっと多角的に情報収集し、複数の専門家に相談すべきだったと反省しています。

M&A仲介業者との1年間|期待と失望の繰り返し

仲介業者の選定

銀行から紹介された仲介業者は、正直なところ、どんな実績があるのかよく分からない会社でした。今思えば、M&A仲介業者にも様々な規模や専門分野があり、もっとしっかりと調べて選択すべきだったかもしれません。

約1年間の交渉プロセス

費用面:

  • 初期手付金:約50万円
  • 担当者の交通費等:意外と高額
  • 成功報酬は買い手負担という条件
 M&A交渉における企業間の面談風景

主な候補企業:

  1. A社(同業他社)
    • 複数企業のM&Aを手がけるグループ会社
    • 役員面談では「長い付き合いになる」とまで言われた
    • 結果:理由不明で不調
  2. B社(異業種)
    • 全国レストランチェーン
    • 社長夫妻が熱心で、改善案まで提示
    • 結果:最終的に不調

交渉が難航した理由(私なりの分析)

今振り返ると、3億円を超える負債が最大のネックだったと思います。銀行の債権放棄があるとはいえ、買い手企業にとってリスクが大きすぎたのでしょう。

また、90年の老舗とはいえ、業界全体が縮小傾向にある製造業で、売上が約1/5まで減少している企業を引き継ぐメリットを、買い手側が見出せなかったのかもしれません。

【重要】 これは私のケースでの推測であり、M&A成功の可能性は個別の状況によって大きく異なります。

M&A断念後の6年間|「自主再建」という名の迷い

重要な経営判断を考える経営者

銀行への報告

約1年のM&A活動が不調に終わった時点で、私は銀行に自主再建を目指したいと伝えました。当時、銀行の担当者や支店長が転勤しており、当初の切迫感は薄れていました。

6年間の模索

M&A断念から実際の破産まで、実は6年という時間がありました。この期間、私は様々な再建策を模索しましたが、結果的には「時間稼ぎ」に終わってしまいました。

当時検討した選択肢:

  • 自主再建(売上回復への取り組み)
  • 事業規模の縮小
  • 新規事業の模索

心理的な負担

この6年間、周囲には極秘で進めていたため、従業員や取引先、家族にも詳しい状況を説明できませんでした。「助かるかも」と「やっぱりダメか」を繰り返すうちに、精神的に相当疲弊していました。

個人的な反省点|今だから思うこと

専門家に相談する経営者のイメージ

情報収集の不足

  • M&A仲介業者の選定がもっと慎重であるべきだった
  • 複数の専門家から意見を聞くべきだった
  • 業界特性を理解した専門家を探すべきだった

選択肢の検討不足

  • M&A以外の選択肢も平行して検討すべきだった
  • 早い段階での民事再生の可能性を探るべきだった
  • 事業の一部売却なども考えられたかもしれない

時間の使い方

  • 6年という時間があったにも関わらず、有効活用できなかった
  • 早めの決断が必要だったかもしれない

【注意】 これらはあくまで私個人の反省であり、一般的に当てはまるものではありません。

参考情報|中小企業のM&Aについて

一般的な統計(参考)

  • 中小企業庁によると、中小企業の事業承継問題は深刻化
  • M&A仲介市場は拡大傾向にある
  • しかし成功率や満足度については、個別のケースに大きく左右される

相談できる機関(例)

  • 中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 各地の商工会議所
  • 日本事業承継協会
  • 事業再生実務家協会

これらの機関では、無料相談なども実施されています(詳細は各機関のwebサイト等でご確認ください)。

最後に|体験談を語る理由

専門家のサポートを受けて前向きに取り組む経営者

この失敗体験をお話しするのは、同じような状況で悩んでいる経営者の方に「専門家への早めの相談の重要性」を感じていただければと思うからです。

私のケースは、90年の老舗製造業で負債3億円超、19億から4億への売上激減、業界全体の不況という特殊な条件でした。あなたの会社の状況は、おそらく私とは大きく異なるでしょう。

だからこそ、まずは信頼できる専門家に相談し、あなたの会社に最適な選択肢を専門的な視点から検討していただくことを強くお勧めします。

【改めて重要なお知らせ】 この記事の内容は、一個人の体験談であり、専門的なアドバイスではありません。経営判断については、必ず適切な専門家にご相談ください。

主な相談先:

  • 弁護士(倒産・事業再生専門)
  • 公認会計士・税理士
  • 認定事業再生士
  • 中小企業診断士

一人で抱え込まず、早めに専門家の力を借りることが何より大切だと、私の体験を通じて強く感じています。

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