はじめに:なぜこの失敗談を書くのか
「あの人は優秀だから、きっと経営のことも分かってくれるはず」
そう思って頼んだコンサルティングが、半年後に自分から「ごめんなさい」と頭を下げて終わることになるとは、当時の私は想像もしていませんでした。
この記事では、ITの専門家として信頼していた女性コンサルタントに経営相談をして失敗した体験を、包み隠さず書きます。彼女は間違いなく優秀でした。でも、それが逆に問題でもあったのです。
同じような失敗をする経営者が一人でも減れば、私の苦い経験にも意味があります。
IT支援の実績があったから「経営も大丈夫」と思い込んだ

彼女とはITプロジェクトで知り合いました。システムの導入や効率化で実際に成果を出してくれた実績があったので、信頼関係はできていました。
売上に悩んでいた私が「経営のことも相談できますか?」と聞いたとき、彼女は「もちろんです」と答えました。ITで結果を出してくれた人なら、経営でも何かヒントをくれるはず——そう期待したのです。
今思えば、これが最初の間違いでした。
ITの専門性と経営コンサルの適性は、全く別物だったのです。
「答えは社長の中にあります」という衝撃の一言

最初のミーティングで財務諸表を見せました。期待していたのは「ここの数字が問題ですね」とか「この部門の収益構造を変えましょう」といった具体的なアドバイスです。
ところが、彼女は資料をサッと眺めて終わり。
「売上を上げたいということですが、やりましょう!」 「答えは社長の中にあります」
この瞬間、何かがおかしいと感じました。私がほしかったのは外部の視点からの分析やアイデアだったのに、なぜか私が答えを出す流れになっている。
でも、優秀な人が言うことだから間違いないはず。そう自分に言い聞かせて続けることにしました。
ポストイット地獄:アイデアを無理やり絞り出す日々

彼女の提案で始まったのが、模造紙とポストイットを使ったブレインストーミングでした。
「とにかく思いつく限りのアイデアを書き出しましょう」
売上アップのための施策を、私が必死に考えて書き続けます。出てくるのは現実味のないものばかり:
- 全国展開する
- YouTubeチャンネルを始める
- 海外に販路を開く
- 新商品を10個開発する
でも彼女は「素晴らしいですね!」と全てを肯定的に受け止めます。そして驚いたのは、貼り付けたポストイット100枚近くの内容を、彼女が完璧に記憶していることでした。
この記憶力の良さが、後々プレッシャーになっていくのです。
「全部同時にやりましょう」という現実離れした提案

ブレストが終わって、私は当然こう思いました:
「さて、この中のどれから始めればいいんだろう?」
ところが彼女の答えは想像を超えていました:
「全部同時進行でいきましょう!できない理由を考えるより、やってみることが大切です」
彼女自身は本気でそう思っていたようです。実際、そのくらい優秀で処理能力の高い人だったのでしょう。
でも私は凡人の経営者です。社員だって普通の人たちです。10個も20個も同時に進められるはずがありません。
このときのすれ違いが、その後の迷走の始まりでした。
毎週の進捗確認という名の尻叩き
彼女は完璧に記憶したアイデアリストを持って、毎週こう聞いてきます:
「YouTubeチャンネルの件、今週はどこまで進みましたか?」 「新商品開発の進捗はいかがですか?」 「海外展開の市場調査は終わりましたか?」
宿題を提出するような気分でした。でも、どれも現実的に進められるものではありません。
それを説明しようとすると「できない理由ではなく、できる方法を考えましょう」と言われる。確かに正論です。でも、私が求めていたのは正論ではなく、現実的なアドバイスだったのです。
自分が信じていないアイデアでは現場は動かない
それでも形だけは実行してみました。いくつかのアイデアを社員に伝えて、取り組んでもらおうとしたのです。
しかし結果は散々でした。
自分自身が半信半疑のアイデアを、社員が本気で取り組むはずがありません。
私の迷いは確実に現場に伝わっていました。「また社長が新しいことを言い出した」という空気が社内に漂うのを感じました。
どのアイデアも成果につながらず、ただ時間とエネルギーを消費するだけでした。
「この話は終わりにしてください」と頭を下げた日

半年が経過したころ、私は限界を感じていました。
- アイデアは山ほどあるのに、どれも実行できない
- 毎週の進捗報告がプレッシャーになっている
- 社員との関係もギクシャクし始めている
- 何より、自分の経営者としての自信を失いかけている
結局、私の方から彼女にお願いしました:
「申し訳ありませんが、この話は一旦終わりにさせてください」
彼女は優秀でした。記憶力も素晴らしく、論理的思考もできる。でも、私たちには根本的な相性の問題があったのです。
失敗の本質:求めていたのは「並走」だった
今振り返ると、失敗の原因がはっきり見えます。
私が求めていたのは「アイデアを出してくれる人」ではなく、「一緒に考えて実行してくれる人」だったのです。
彼女のスタイルは「社長の中にある答えを引き出す」コーチング型でした。一方、私が必要としていたのは「外部の視点から具体的な提案をしてくれる」アドバイス型でした。
どちらが正しいということではありません。ただ、お互いが求めているものが違っていただけです。
経営コンサル選びで学んだ3つの教訓
この失敗から得た教訓を3つにまとめます:
1. 専門分野の実績 ≠ 経営コンサルの適性
ITで優秀だからといって、経営支援も得意とは限りません。求められるスキルセットが全く違うからです。
2. 「優秀すぎる」ことが問題になることもある
相手の処理能力が高すぎて自分がついていけないと、かえって委縮してしまいます。大切なのは能力の高さではなく、歩幅が合うかどうかです。
3. 支援スタイルのすり合わせは必須
コーチング型なのか、アドバイス型なのか。どんなスタイルを求めているのかを、事前にしっかり確認すべきでした。
まとめ:失敗を次に活かすために
この体験は確かに失敗でしたが、大きな学びも得ました。
経営において「正解」を求めるのではなく、「一緒に試行錯誤してくれる人」を見つけることの大切さです。
もしあなたがコンサルタントへの依頼を検討しているなら、以下をチェックしてみてください:
- [ ] 自分が求めている支援スタイルを言語化できているか
- [ ] 相手の得意分野と、依頼したい内容がマッチしているか
- [ ] 「優秀さ」だけでなく「相性」も考慮しているか
- [ ] 具体的な成果物やゴールを設定できているか
私の失敗が、誰かの成功のヒントになれば幸いです。
この記事が参考になったら、ぜひシェアしてください。経営者同士、失敗談を共有することで、お互いの成長につながると信じています。
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