企業経営を行う過程で資金繰りは最重要課題です。月次試算表や決算書では赤字が出ていても、仕入債務や借入金などの支払いに必要な現金さえあれば経営を継続することができます。しかし、資金がショートした瞬間に状況は一変します。
今回は、資金繰りが苦しい時にすぐ実践できること、検討できる融資制度について解説します。そのうえで、苦しい状況でもやってはいけない施策を把握し、どういった方法で改善を図るかを実際に倒産を経験した経営者の体験談とともにお伝えします。
1. 資金繰りの重要性
そもそも資金繰りとは?
企業経営における資金繰りとは、自社の収入と支出を継続的に管理して、常に事業資金が残るように調整することを指します。設備投資や従業員雇用、借入金返済などの支出と、売掛金や不動産収入といった収入のバランスが取れるように管理することが資金繰りの基本的な仕組みになっています。
資金繰りが適切に行えていないと設備投資や仕入れなど必要な支出を行えなくなり、企業の信用低下や倒産などの問題を引き起こすリスクがあります。

赤字でも資金が回っている間は銀行も優しい – 優しいうちに大胆な手を打つべき
多くの経営者が誤解しているのは「赤字=危険」「黒字=安全」という単純な図式です。しかし実際の経営現場では、赤字であっても資金繰りが回っている限り、銀行や取引先は比較的協力的な態度を維持します。
「一時的な不調はどこの会社でもあることです。」 「経費削減で改善できそうですか?」 「新規事業の見通しはいかがですか?」
このような前向きな会話が続いている間は、まだ「改善可能な状況」として扱われます。銀行の担当者も「支援して立て直したい」というスタンスを保ってくれるでしょう。
しかし、資金がショートした瞬間に状況は激変します。
「経営計画書を出してください。」 「今月と来月の資金繰り表、あと年間の見通しもお願いします。」
会話の内容が「支援」から「回収」に変わり、銀行の態度も一変します。この段階になってから対策を講じても、選択肢は大幅に限られてしまいます。
だからこそ、まだ銀行が「優しい」段階で、抜本的な経営改革に取り組むことが重要なのです。表面的な経費削減や在庫処分といった小手先の対策ではなく、事業構造そのものの見直しや、場合によっては事業転換まで視野に入れた大胆な手を打つべきタイミングと言えるでしょう。
💡体験談:「給料が出せません」- 私が経験した資金繰り危機の始まり
先代の手持ち資金に余裕があったときは、私が頭を下げてお願いするだけで危機は乗り越えられていました。そんな余裕がある時期に、大胆な手を打つべきだったのでしょう。経理担当者から給料日の数日前にこんな事を言われて、怒鳴りつけもせずに対応してきた私の甘さが全ての原因でした。

2. 資金繰りが苦しくなる原因分析
資金繰りの問題を根本的に解決するためには、なぜ資金不足に陥ったのかを正確に把握することが重要です。表面的な症状だけでなく、その背景にある構造的な問題を理解することで、適切な対策を講じることができます。
経営計画に問題がある
売上が安定しない、前年よりも少なくなっている状況で対策を取っていないと事業資金が不足し、経営が悪化する場合があります。特に以下のような状況は危険信号です。
売上予測の甘さ
- 楽観的な売上見込みに基づいた資金計画
- 季節変動や市場環境の変化を考慮していない予算設定
- 新規事業や新商品の売上を過大評価
市場環境への対応不足
- 競合他社の増加や顧客ニーズの変化への対応遅れ
- デジタル化など業界の構造変化に追いついていない
- 価格競争に巻き込まれて利益率が低下
無駄な出費が多い
利益と経費のバランスが悪いと製品開発や仕入れなどに使える資金が減少し、資金繰りが苦しい状況になるリスクがあります。特に固定費の見直しができていない企業では、売上が下がっても支出が減らないため、資金繰りが急速に悪化します。

見直すべき経費の例
- 不採算の事業所にかかる人件費や賃料
- 効果が測定できていない広告宣伝費
- 過度に高額な役員報酬や福利厚生費
- 売上規模に見合わなくなった設備の維持費
- 利用実態に合わない各種サブスクリプション
過剰在庫
売上状況に対して在庫が多すぎる場合、仕入れや保管などに余分な費用がかかって資金繰りが悪化することがあります。在庫は「将来売れる商品」ではなく「現在拘束されている資金」として認識する必要があります。
過剰在庫が引き起こす問題
- 仕入代金の支払いによるキャッシュアウト
- 倉庫代や管理コストの継続的な発生
- 商品価値の劣化や陳腐化による損失
- 新商品投入のための資金不足
投資の失敗
事業設備の更新や店舗拡大などの設備投資には多額の費用がかかることから、支出のタイミングや方針によっては経営状況を悪化させる要因になります。
よくある投資の失敗パターン
- 売上向上の見込みが不確実な設備投資
- 借入金の返済計画を十分検討しない投資
- 投資回収期間の計算が甘い事業拡大
- 本業以外への安易な多角化

💡体験談:私の会社が資金繰り悪化に陥った本当の原因
新規に事業所を拡大したものの、想像以上に売上げが伸びず赤字だったという事はあることだと思います。しかし、これを早期に判断し撤退するのは経営者の資質にかかるものです。
私はとても諦めが悪く、いつまでも赤字を垂れ流してしまいました。各所の金額は大きなものではありませんでしたが、何か所も何年も続くと大変な資金ロスになります。
3. ①今すぐにできることをやる
資金繰りの失敗による経営悪化を回避するには、支出を補えるだけの事業資金を調達することが重要になります。まずは金融機関からの追加融資を検討する前に、今すぐできることから実施しましょう。
一つ一つの効果は高くないかもしれませんが、継続して見直しを行うことで、資金繰りの悪化が起こりにくい財務体質に変化していきます。
資産売却・遊休資産処分
保有している不動産や機械といった資産の売却は、経営状況に関わらず実施しやすい資金調達方法です。企業経営における重要性が低い、維持費が高いなどの条件に該当する資産は売却することで資金繰りが改善する場合があります。
売却対象となる資産例
- 事業に使用していない土地や建物
- 稼働率の低い機械設備
- 社用車(リースへの切り替えも検討)
- 投資用不動産
- 有価証券や会員権
採算性の低い資産は売却することで維持費を削減する効果もあるので、資金繰りが苦しい時に不要な資産を売却することは即効性が見込める対策のひとつです。
在庫削減

在庫を過剰に抱えていると維持費が高くなり、資金繰りを悪化させる要因になります。原材料や半製品は多すぎると保管場所や維持費がかさむ他、売上になるまでの間に資金不足を起こすリスクが高くなります。
在庫削減の具体的方法
- 売れ筋商品の分析と死に筋商品の処分
- 安売りやアウトレット販売での在庫一掃
- 仕入れタイミングの見直し(発注点管理)
- 季節商品の早期見切り販売
- 原材料の適正在庫量の再設定
回収サイト・支払いサイトの見直し
資金繰りを良くするためには「回収は早く、支払いは遅く」することが鉄則です。売上債権の回収サイト(回収期間)を早くし、仕入債務の支払サイト(支払期間)を遅くすることで資金繰りが楽になります。
回収サイト短縮の方法
- 請求書発行の早期化
- 支払条件の見直し交渉(月末締め翌月払い→当月払いなど)
- 現金割引制度の導入
- 前受金制度の活用
支払いサイト延長の方法
- 仕入先との支払条件変更交渉
- 支払いサイトの長い新規仕入先の開拓
- 現金決済から手形決済への変更交渉
ただし、回収サイト・支払サイトともに取引先が関わることですので、慎重に交渉する必要があります。業界の平均的なサイトを把握し、平均よりも不利なサイトになっている場合はサイトの変更を依頼してみるといいでしょう。

経費削減
経費の削減は会社の資金繰りに直結します。過去の帳簿を見直し、経費に無駄がないかをよく精査してみましょう。
削減効果の高い経費項目
- 通信費(不要な回線やプランの見直し)
- 光熱費(省エネ設備への更新、契約プランの見直し)
- 保険料(補償内容の見直し、相見積もり)
- リース料(解約可能なものは解約、必要なものは条件変更交渉)
- 消耗品費(まとめ買い、仕入先変更)
クレジットカード決済の活用
経費の中でも現金払いではなく、クレジットカードで支払うことができる経費については積極的に支払方法を変更しましょう。クレジットカードで支払いを行うことで、支払いを1か月ほど伸ばすことができ、資金繰りにとってプラスになります。
手形割引の活用
仕入れ費用や人件費などの資金調達が必要な状況では、手形割引を利用することで対応できる場合があります。手形割引とは、手数料を支払うことで約束手形や為替手形の代金を期日前に受け取る方法です。
手形割引の特徴
- 割引率:金融機関2%~4.5%、一般事業者2.5%~15%
- 審査期間:比較的短期間で現金化可能
- 必要書類:手形、印鑑証明書、決算書など
支払い期日までの長さ、申込人の信用性などによって手形割引率は変わる場合があるので、手形割引を検討する際には複数の機関から比較検討することが重要になります。

ファクタリングの活用
急遽資金が必要な場合には、手数料が発生しますが売上債権を買い取ってもらえるファクタリングを利用するのも1つの方法です。ファクタリングとは、自身が保有する売掛債権をファクタリング事業者に現金化してもらうシステムです。
ファクタリングの特徴
- 現金化スピード:最短即日対応可能
- 手数料:売掛債権の1%~20%程度(2社間ファクタリングの場合)
- 審査:売掛先の信用度が重要
- 償還請求権:多くの場合はノンリコース(買い戻し義務なし)
ファクタリングの注意点
ファクタリングによる手数料は売掛債権の20%以上になるケースもあり、回収できる金額は他の方法と比較して少なくなりやすい点には注意が必要です。また、継続的に利用すると資金繰りがさらに悪化する可能性があるため、一時的な資金調達手段として位置づけるべきです。
💡失敗体験:これらの対策を全部やっても足りなかった現実
私が経営していた会社での経験
・資産売却・遊休資産処分: 特に遊んでいる資産や設備はありませんでしたが、買い替えのタイミングがきた車両や設備はリースへと変更しました。1時的には現金の流出を抑えることが出来ましたが、長い目で見ると費用的には高くなるので諸刃の刃でした。
・在庫削減: かつて多くの在庫を抱えていた私の会社は、資金繰りが厳しくなった時にそれを食い潰して生きながらえました。そういう意味では、在庫=悪という意見には反対です。
しかし、使える在庫、売れる在庫が無くなってくると、資金的には厳しくなり、余分な在庫を投げ売りで現金化したこともあります。そういう状態では利益の有無とかは関係なくなるので末期症状です。
・回収サイト・支払いサイトの見直し: この手法はかなり有効だと思います。私の会社の場合、得意先も仕入先も親身になって相談に応じていただき、色々な支援をいただきました。私の数少ない成功事例だと思うのですが、手厚い支援をしていただいたにも関わらず、倒産させてしまったのは痛恨の極みです。
・経費削減: 売上げがどんどん下がってくれば変動費は自然に下がっていくはずです。しかし建物や倉庫が大きいと荷物が少なくなっても箱の維持のために電気代や水道代は減っていきません。
私の会社では複数あった倉庫を一つにまとめたりといった削減策を講じたのですが、思わぬトラブルが続き余分な経費がかかることになりました。トータルでは削減になったと思うのですが、期待した効果は出ませんでした。
・手形割引の活用: この手法は以前に使っていましたが、得意先の支払いを現金決済に変更していただいたので更に効率化しました。
・ファクタリングの活用: この方法は私の知識不足から検討しませんでした。場合によっては有効な手段だったのかもしれません。
倒産後にファクタリングについて詳しく調べてみたところ、 当時の状況なら利用できた可能性があることが分かりました。 同じように知らない経営者の方もいるかもしれないので、 調査結果を別記事にまとめています。 → [元経営者が後から調べたファクタリング情報まとめ]
4. ②資金を調達する

即効性のある対策を実施した後、次に検討すべきは外部からの資金調達です。金融機関からの融資は、適切に活用すれば企業再生の強力な武器となります。しかし、申請から実行までには時間がかかるため、資金がショートする前に早めに行動することが重要です。
制度融資の活用
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して実施する融資制度です。一般的な銀行融資よりも条件が良く、資金繰りに悩む中小企業にとって重要な資金調達手段となります。
制度融資の特徴
金利面での優遇
- 制度融資の場合、金利は1.5~2.2%(2024年4月1日現在)と低金利での借入が可能
- 自治体からの利子補給により、実質的な金利負担がさらに軽減される場合もある
- 日本政策金融公庫の一般融資と比較しても有利な条件が多い
融資条件
- 融資限度額:自治体により異なるが、一般的に3000万円~1億円
- 返済期間:設備資金10年以内、運転資金7年以内が標準
- 担保・保証人:信用保証協会の保証により、担保や連帯保証人が不要な場合が多い
注意点 制度融資では信用保証協会への保証料(年率0.45%~1.9%程度)が別途必要になります。金利だけでなく保証料も含めた総コストで判断することが重要です。
申請から実行までの期間
制度融資の場合、申請から融資実行までに約1~2か月を要します。
- 事前相談・申請:1週間
- 自治体での審査:1~2週間
- 金融機関・保証協会での審査:2~3週間
- 融資実行:数日
資金繰りが厳しい状況では、この期間を見込んで早めに申請することが必要です。
日本政策金融公庫の活用

日本政策金融公庫は、中小企業の資金調達を支援する政府系金融機関として、民間金融機関では対応が困難な企業にも融資を行っています。特に資金繰りが厳しい企業向けの制度が充実しています。
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)
社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況の悪化を来している企業の経営基盤強化を支援する制度です。
融資条件(2025年現在)
- 融資限度額:4,800万円
- 金利:2.06% ~ 2.55%
- 返済期間:最長8年
- 担保:相談により決定
- 保証人:代表者保証が原則
適用対象
- 最近の決算で売上が前年または前々年に比べ5%以上減少
- 最近3か月の売上が前年同期に比べ5%以上減少
- 原材料価格の高騰により、売上原価が上昇しているなど
2025年3月末まで延長が決定されており、コロナ融資の返済負担に苦しむ企業への支援が継続されています。
企業再建資金
より深刻な経営状況にある企業向けの制度で、事業の再建を前提とした融資です。
融資条件
- 融資限度額:7,200万円
- 金利:セーフティネット貸付と同程度
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金15年以内
- 担保・保証人:応相談
適用要件
- 業況が悪化し、経営改善を図ろうとする企業
- 金融機関などの支援により再建に取り組む企業
- 事業計画の策定と実行が前提
申請プロセスと期間
日本政策金融公庫の融資申し込みから融資までの期間は約1か月ですが、セーフティネット貸付などでは審査により時間がかかる場合があります。
標準的な流れ
- 事前相談(電話または窓口)
- 申請書類の作成・提出
- 面談・現地調査
- 審査結果の通知
- 契約・融資実行
必要書類
- 借入申込書
- 企業概況書
- 決算書(3期分)
- 試算表
- 資金繰り表
- 事業計画書など
助成金・補助金の活用

融資以外の資金調達手段として、助成金や補助金の活用も検討できます。返済不要の資金ですが、要件や手続きが複雑で、交付までに時間がかかる点に注意が必要です。
主な助成金・補助金
事業再構築補助金
- 補助上限額:100万円~1億円(枠により異なる)
- 補助率:中小企業2/3、中堅企業1/2
- 対象:新分野展開や業態転換など
小規模事業者持続化補助金
- 補助上限額:50万円~200万円
- 補助率:2/3
- 対象:販路開拓や生産性向上の取り組み
雇用調整助成金
- 助成率:中小企業4/5~10/10
- 対象:休業手当等の一部を助成
注意点
助成金・補助金は「後払い」が原則で、先に支出を行い、後から交付される仕組みです。即座の資金繰り改善には直結しないため、中長期的な財務改善の一環として位置づけるべきです。
💡体験談:各資金調達を実際に試した結果と審査の厳しさ
私の会社の場合、日本政策金融公庫からコロナの融資を受けました。リスケ状態であり新規融資が通る状況では無かったのですが、国の方針だったのかかなりの金額を融資していただきました。
ただ、審査の面談で「コロナ以前に元々の経営状態が悪すぎますね」と真理を指摘され頭が上がらなかったのが忘れられません。
結局その融資を1円も返済できずに倒産させてしまいました。融資が受けられれば安心してしまいますが、経営の立て直しこそが本題なのです。
補助金や助成金に関しては社会保険労務士が支援してくれることを後から知りました。他にも窓口があるようなので調べてみるのがいいと思います。手続きがかなり煩雑なので自力では難しく、私は断念してしまいました。
5. ③融資のリスケジュール・借り換え

新規融資が困難な状況では、既存の借入金の返済条件を変更する「リスケジュール(リスケ)」が有効な選択肢となります。リスケは一時的に返済負担を軽減し、経営再建のための時間を確保する重要な手段です。
リスケジュールとは
リスケジュール(リスケ)とは、融資の返済条件を変更することで、具体的には毎月の返済額の変更や返済期日の変更、利率の変更などを指します。「条件変更」や「貸出条件緩和」とも呼ばれ、金融機関との交渉により実現します。
リスケジュールの主な内容
返済金額の変更
- 月々の元金返済額を減額または一時停止
- 利息のみの支払いに変更
- 返済額の段階的増額(業績回復に合わせて)
返済期間の延長
- 返済期限の延長により月々の負担を軽減
- 据置期間の設定(一定期間は利息のみ支払い)
金利条件の変更
- 一時的な金利引き下げ
- 固定金利から変動金利への変更
リスケの具体的手順

リスケジュールを申し入れる際には、「リスケジュールがどうしても必要だ」ということを真摯に伝える必要があります。金融機関は「リスケによって融資が返済される可能性があるのか」を検討するため、以下の手順で進めることが重要です。
1. 事前準備
現状分析と将来計画の策定
- 資金繰り表の作成(過去6か月~1年分の実績)
- 事業計画書の見直し
- リスケ期間中の収支計画
必要書類の準備 以下の書類を事前に準備します:
- 過去6か月~1年分程度の資金繰り実績または試算表
- すべての借入れ分に関する取引状況、返済予定の一覧
- 担保状況の一覧(抵当権や根抵当権の有無、金額など)
2. 金融機関への相談・交渉
メインバンクから開始
- 最大の融資残高を持つ金融機関から相談を始める
- 他の金融機関への説明方針を相談
- 統一した条件変更案の作成
交渉時のポイント
- 経営状況の正直な開示
- 改善計画の具体性と実現可能性
- 経営者の本気度と責任の明確化

3. 条件変更契約の締結
契約内容の確認
- 変更後の返済条件
- リスケ期間(通常1年程度)
- 定期的な業績報告義務
- 追加担保や保証の有無
借り換え制度の活用
既存の融資を新たな条件で借り換えることで、返済負担を軽減できる場合があります。特に金利環境の変化や制度の改正により、有利な条件での借り換えが可能になることがあります。
借り換えの概要
制度融資への借り換え
- 高金利の既存融資を低金利の制度融資に借り換え
- 返済期間の延長による月々負担の軽減
- 信用保証協会の保証を活用
金融機関の借り換え商品
- 複数の借入を一本化
- 金利条件の見直し
- 返済スケジュールの再設定
借り換えのメリット・注意点
メリット
- 返済期間の延長による月々負担の軽減
- 金利条件の改善可能性
- 複数借入の一本化による管理の簡素化
注意点
- 保証料が新たに発生する場合がある
- 審査が必要(必ず借り換えできるとは限らない)
- 総返済額が増加する可能性
- 借り換え手数料が発生する場合がある
リスケジュールのメリット・デメリット
メリット
資金繰りを改善できる(現預金の減少を抑えられる) 返済に回す必要がなくなるため、条件緩和した金額分の余裕ができます。
リスケ中は法的な回収措置をとられない(倒産を回避) 銀行からの強制的な法的処置から一旦回避でき、再建するための時間を確保できます。
デメリット

信用情報への影響
- 信用保証協会のデータベースに条件変更の記録が残る
- 他の金融機関からの新規融資が困難になる
継続的な監視
- 定期的な業績報告が義務付けられる
- 経営に対する金融機関の関与が強まる
根本的解決ではない
- あくまで時間稼ぎの側面が強い
- 事業構造の改善なしには効果が限定的
リスケ成功のポイント
1. 早めの相談
資金がショートしてからでは選択肢が限られます。返済が困難になる見通しが立った時点で、早めに金融機関に相談することが重要です。
2. 具体的な改善計画
「リスケジュールを申し入れる目的は、事業の再生である」ということをしっかり主張し、資金調達のためにあらゆる手を尽くし、経常収支は改善傾向にあることを示すことが重要です。
3. 誠実な対応
金融機関との信頼関係が最も重要です。隠し事をせず、困った時は素直に相談する姿勢が長期的な関係構築につながります。
💡体験談:銀行にリスケ相談した時の現実
私の会社で初めてリスケらしきことをしたのは、サブバンクに対してでした。資金的にそれほど苦しいわけでは無かったのですが、資金繰りの谷間に入った時に返済があり、それを延長してもらったわけです。
当時私はたいして重大なこととは考えていませんでしたが、サブバンクの変貌ぶりはすごく担当者が来社する度に怒られていました。
結局、そのお金は返済したのですが、当時の私は何故返済が出来なかったのか?この先どうなることが予想されるのか?などを真剣に考える危機感も技量もなく、その場を凌ぐことで乗り切ろうとしていました。
経理担当者とよく考えておくべきでした。その後、リスケはメインバンクにも及び、銀行対応に追われる日々が続いていきます。こうなると、まともな経営は難しくなります。
6. 最終手段としての個人借入

企業の資金調達手段が尽きた時、経営者が最後に頼るのが個人名義での借入です。しかし、個人借入は高金利であり、経営者個人の生活に深刻な影響を与える可能性があります。この手段を検討する前に、そのリスクを十分に理解することが重要です。
個人借入の種類と特徴
カードローン(消費者金融・銀行)
消費者金融系カードローン
- 金利:年3.0%~18.0%(上限金利18.0%が一般的)
- 融資スピード:最短即日~数日
- 審査:比較的柔軟だが総量規制の対象
- 限度額:年収の3分の1まで(総量規制)
銀行系カードローン
- 金利:年1.5%~15.0%程度
- 融資スピード:数日~1週間
- 審査:やや厳格
- 限度額:銀行の独自基準
ビジネスローン
事業者向けのローンですが、実質的には個人保証が必要となることが多く、個人借入に近い性質があります。
特徴
- 金利:年3.0%~18.0%
- 融資限度額:300万円~1,000万円程度
- 審査期間:最短即日~1週間
- 必要書類:決算書、確定申告書等
個人借入の法的制限
利息制限法による金利上限
利息制限法により、借入金額に応じて上限金利が定められており、10万円未満は年20.0%以下、10万円以上100万円未満は年18.0%以下、100万円以上は年15.0%以下となっています。
総量規制
貸金業者からの借入は、年収の3分の1を超えて借りることができません。これは消費者金融やクレジットカード会社からの借入に適用されます。
対象外となる借入
- 銀行からの借入
- 住宅ローンや自動車ローン
- 事業者向けローン(ただし個人保証は必要)
個人借入のリスク

高金利による返済負担
個人向け融資の金利は、企業向け融資と比較して大幅に高くなります。
金利比較例
- 制度融資:年1.5~2.2%
- 日本政策金融公庫:年2.06~2.55%
- 個人カードローン:年15~18%
- 消費者金融:年18%(上限)
月10万円の返済でも、年18%の金利では元金がなかなか減らず、長期間にわたって高い利息を支払い続けることになります。
個人信用情報への影響
信用情報機関への登録
- 借入情報が5年間記録される
- 返済遅延があると事故情報として記録
- 将来の住宅ローンや自動車ローンに影響
生活への直接的影響
家計圧迫のリスク
- 個人の生活費や住宅ローンに影響
- 家族の生活水準の低下
- 子どもの教育費への影響
精神的ストレス
- 事業の失敗と個人の借金による二重の負担
- 家族関係への悪影響
- 経営判断の冷静さを失う可能性
個人借入を検討する際の注意点
事業資金としての利用制限
多くのカードローンは「事業資金として使用不可」という条件があります。契約違反となる可能性があるため、事前に利用規約を確認することが重要です。

返済計画の慎重な検討
確実な返済財源の確保
- 事業とは別の収入源(給与所得、不動産収入等)
- 事業回復の見込みがない場合の返済方法
- 最悪の場合の資産売却による完済可能性
家族への影響を考慮
個人借入は経営者だけでなく、家族の生活にも直接影響します。配偶者との十分な相談と理解が不可欠です。
より安全な代替手段の検討
個人借入に頼る前に、以下の選択肢を再検討することをおすすめします。
事業の整理・縮小
コア事業への集中
- 不採算部門の切り離し
- 固定費の大幅削減
- 事業規模の適正化
早期の法的整理
民事再生や破産の検討
- 個人保証の整理も含めた総合的な解決
- 弁護士との早期相談
- 新たなスタートへの準備

💡体験談:やむを得ずキャッシングを選択した経験
当時の経理担当者の資金管理が非常に甘く、給料日の3日ほど前に「給料を払うお金がありません」と言われたことがあります。当時お付き合いしていたコンサルタントに相談して、キャッシュカードによる借入れをしました。
1ヶ月以内に確実に返済できる見通しがあったので、緊急手段として借りたのですが簡単に借りれるのとは反対に、返済がとても面倒でした。金利も銀行の借入れよりはるかに高かったので、この利用は一度きりにしました。
個人借入は、その場しのぎの解決策に過ぎません。高金利による返済負担は、事業だけでなく個人の生活をも破綻させる可能性があります。この手段を検討している段階では、むしろ事業の抜本的な見直しや法的整理を含めた総合的な解決策を専門家と相談することが重要です。
7. 絶対にやってはいけないこと
資金繰りが苦しくなると、冷静な判断ができなくなり、取り返しのつかない選択をしてしまう経営者が少なくありません。しかし、一時的に資金を調達できたとしても、その後の経営や人生に深刻な影響を与える行為があります。ここでは、絶対に手を出してはいけない危険な行為について解説します。
街金融・商工ローンの危険性
高金利貸付業者の実態
商工ローンには、「法外な金利を請求される」「強引な取り立てがある」など、ネガティブなイメージを持つ方も多いのが現実です。これらの業者は、正規の金融機関から融資を受けられない企業をターゲットにして、法外な条件での貸付を行います。
危険な特徴
- 年利15~29.2%という高金利(上限金利ギリギリ)
- 短期間での一括返済要求
- 個人資産への強力な担保設定
- 連帯保証人への執拗な取り立て
実際の被害事例
返済不能に陥るケース
- 月100万円を年利20%で借入した場合、月17万円程度の利息が発生
- 元金がほとんど減らず、借入残高が増加し続ける
- 最終的に担保資産(自宅等)を失う結果となる
取り立ての実態 正規の貸金業者であっても、返済が滞ると以下のような圧力を受ける可能性があります:
- 頻繁な電話による督促
- 事業所や自宅への訪問
- 取引先への連絡による信用毀損

なぜ手を出してしまうのか
心理的な要因
- 「とりあえず今月を乗り切れば」という短期的思考
- 正規金融機関からの融資を断られた絶望感
- 誰にも相談できない孤独感
業者の巧妙な営業手法
- 「審査が通りやすい」「即日融資可能」という甘い言葉
- 初回は小額から始めて信頼関係を築く
- 経営者の心理的弱みにつけ込んだアプローチ
税金・社会保険料滞納のリスク
滞納による法的リスク
税金や社会保険料の滞納で逼迫した企業で納税が一定期間滞ると、関係省庁は金融機関や企業の取引先に取引照会通知を送付するため、事業継続に深刻な影響を与えます。
段階的な措置
- 督促状の送付(滞納から1~2か月)
- 財産調査(滞納から3~6か月)
- 差押予告通知(滞納から6か月~1年)
- 財産差押の実行(予告から1~3か月後)
差押の対象となる財産
事業用資産
- 売掛金・預金口座
- 商品・設備・機械
- 不動産(事業用・個人用問わず)
- 生命保険の解約返戻金
個人資産への影響 代表者の個人資産も差押の対象となる場合があり、特に以下の資産は注意が必要です:
- 個人名義の預金口座
- 自宅などの個人不動産
- 個人の給与・役員報酬

社会保険料滞納の特殊性
社会保険料は毎月の給与から天引きで徴収され、事業主負担分と合わせて会社が一括して納付するものです。従業員から預かった保険料を滞納することは、預り金の流用と同様の性格を持ちます。
従業員への影響
- 健康保険証の無効化
- 年金受給権への影響
- 労働基準監督署による調査対象となる可能性
給料・仕入先支払い滞納の法的問題
給料滞納の法的リスク
労働基準法違反
- 給料の支払いは労働基準法第24条により義務付けられている
- 滞納は労働基準法違反として刑事罰の対象(30万円以下の罰金)
- 労働基準監督署による指導・勧告の対象
従業員の法的手段
- 労働審判による支払い請求
- 未払い賃金立替払制度の利用
- 労働組合による団体交渉
仕入先支払い滞納のリスク
信用失墜と取引停止
- 支払い遅延情報の業界内拡散
- 現金取引への切り替え要求
- 新規取引先との契約困難
法的措置
- 売掛金の回収困難による取引先の連鎖倒産リスク
- 詐欺罪で告発される可能性(支払い能力がないにも関わらず取引を継続した場合)
粉飾決算・虚偽申告の危険性

粉飾決算のリスク
刑事責任
- 会社法違反(特別背任罪):最高10年の懲役
- 法人税法違反:最高10年の懲役または1000万円以下の罰金
- 金融商品取引法違反(上場企業の場合)
民事責任
- 株主代表訴訟による損害賠償請求
- 取締役の第三者に対する損害賠償責任
- 銀行からの期限の利益喪失・一括返済請求
虚偽申告の影響
金融機関との関係悪化
- 全ての取引の見直し・停止
- 既存融資の期限の利益喪失
- 業界内での信用失墜による新規融資困難
やってはいけない行為のまとめ
共通する特徴
これらの「やってはいけないこと」には共通する特徴があります:
- 短期的な利益と長期的な破滅:一時的に資金を調達できても、長期的には状況を悪化させる
- 法的リスクの拡大:民事問題が刑事問題に発展する可能性
- 信用の完全な失墜:回復が困難な社会的信用の喪失
- 個人生活への深刻な影響:事業だけでなく個人や家族の生活も破綻
適切な選択肢

これらの危険な行為に手を出す前に、以下の適切な選択肢を検討することが重要です:
専門家への相談
- 弁護士による法的整理の検討
- 税理士による税務相談
- 中小企業診断士による経営改善支援
公的制度の活用
- 中小企業再生支援協議会
- よろず支援拠点
- 商工会議所の経営相談
早期の事業整理
- 民事再生手続きの検討
- 事業譲渡による従業員の雇用確保
- 廃業支援制度の活用
💡体験談:これらをやってしまった恐怖体験
高金利の借入れは自滅するだけだと意識していましたので、これは利用しませんでしたが、社会保険料は大きく滞納してしまいました。これはコロナ救済の時の特例で、業績が悪化していれば納付を延期してくれる制度があったからです。
当時の経理担当者やコンサルタントには、「ここは融通がきくところだ」という認識があり、私もそのつもりになっていたのですが、とんでもない間違いでした。
国の方針が変わり、納付の延長が禁止になり、延滞していた社会保険料も返済しないといけなくなった時、資金繰りは途端に悪くなりました。
私は毎月、年金事務所に顔を出して担当者と話していたので、強引な差し押さえをされることはありませんでしたが、倒産後には売掛金がすぐに差し押さえられました。間違いなく、「やってはいけないこと」に分類されます。
資金繰りに追い詰められた時こそ、冷静な判断が求められます。一時的な延命策は、結果的に傷を深くするだけです。早期に専門家に相談し、適切な解決策を見つけることが、経営者として最後の責任と言えるでしょう。
8. 長期的な改善方法

資金繰りの問題を根本的に解決するには、一時的な対策だけでなく、企業の体質そのものを改善する長期的な取り組みが不可欠です。ここでは、持続可能な財務体質を構築するための具体的な方法について解説します。
資金繰り表の作成と活用
資金繰り表の重要性
資金繰り表とは、企業や個人が一定期間における現金の収入や支出を表にしたもので、資金不足になりそうなタイミングをあらかじめ把握できる表です。多くの経営者が損益計算書や貸借対照表に注目しがちですが、損益計算書では判断できない会社の資金状況を一目で確認することができます。
資金繰り表作成のメリット
- 将来の資金不足を事前に予測できる
- 金融機関との交渉時に具体的な資料として活用できる
- 経営計画の見直しタイミングを適切に判断できる
- 「黒字倒産」を防ぐことができる
資金繰り表の作成方法
必要な項目
- 現金収入
- 売掛金回収
- 現金売上
- その他収入(借入金、資産売却等)
- 現金支出
- 買掛金支払い
- 人件費
- 家賃・光熱費などの固定費
- 借入金返済
- 税金・社会保険料
- 月末現金残高
- 前月繰越+当月収入-当月支出
作成期間とタイミング
- 過去6か月の実績と今後12か月の予定を記載
- 月次で更新し、実績と予定の差異を分析
- 資金不足が予想される3か月前には対策を開始

資金繰り表を活用した改善策
早期警戒システムとしての活用 資金繰り表により、資金不足が予想される時期を事前に把握し、以下の対策を講じることができます:
- 売掛金回収の促進
- 支払いサイトの調整交渉
- 追加融資の申し込み
- 不要経費の削減
日常の資金管理体制の確立
週次・月次のルーチン化
週次チェック項目
- 預金残高の確認
- 今週の入金予定と支払い予定の突き合わせ
- 売掛金の回収状況チェック
- 緊急時の資金調達可能額の把握
月次チェック項目
- 資金繰り表と実績の差異分析
- 翌月・翌々月の資金不足予測
- 主要取引先の支払い状況変化
- 金融機関残高の推移確認
早期警戒システムの構築

危険信号の設定
- 預金残高が月商の1か月分を下回った時点
- 主要取引先からの入金遅延が発生した時点
- 借入金返済が困難になる3か月前
対応手順の明確化
- 各段階での具体的な対策を事前に決めておく
- 金融機関への相談タイミングを明確化
- 家族や従業員への説明方針を準備
中小企業に適した財務改善
身の丈に合った改善策
固定費の徹底見直し
- 家賃交渉や移転による賃料削減
- 通信費・光熱費の契約プラン見直し
- 不要な設備リースの解約
- 役員報酬の適正化(同規模企業との比較)
変動費の効率化
- 仕入先の相見積もり徹底
- ロット単位の見直しによる仕入単価削減
- 外注費の内製化検討
- 不要な業務委託契約の見直し
現実的な事業改善
コア業務への集中
- 利益率の低い事業・商品の整理
- 得意分野での差別化強化
- 人手不足解消のための業務効率化
- 不採算顧客との取引見直し
現金商売の比率向上
- 掛け売りから現金販売への段階的移行
- サブスクリプション型サービスの導入
- 前払い制度の活用(回数券、年会費等)
- 即金性の高い事業への軸足移動

💡教訓:もっと早くやっておくべきだった対策
2代目、3代目と会社を引き継いだ経営者は多いと思いますが、私もそうでした。社長として22年ほど経営をしましたが、会社の経理内容を把握したのは最後の3年くらいでした。
それまでは経理担当者がいて中身はブラックボックス、今思うと目隠しをして会社を経営していたのだと認識できます。資金の動き、経費などは上がってくる数字だけではなく、しっかりと内容を担当者と共有するべきでした。
長期的な資金繰り改善は、短期的な効果は期待できませんが、企業の持続可能性を高める根本的な解決策です。特に資金繰り表の作成は、経営の「見える化」を実現し、適切なタイミングでの意思決定を可能にします。資金繰りに余裕がある時期にこそ、これらの体質改善に取り組むことが重要です。
9. 改善の余地がない場合の法的整理
あらゆる対策を講じても資金繰りの改善が見込めない場合、法的整理による事業の再建や整理を検討する必要があります。法的整理は「敗北」ではなく、関係者への被害を最小限に抑え、経営者が新たなスタートを切るための重要な選択肢です。
法的整理の種類と概要
民事再生手続き
民事再生は、中小企業を含む一般企業(個人事業主も含む)を対象とした、債務圧縮や返済条件変更によって事業継続を図る手続です。代表者が「経営権」を維持しながら再建を進めるDIP型が特徴となっています。
民事再生の特徴
- 株式会社に限定されず、学校法人や宗教法人、医療法人、中小企業や個人も対象
- 手続きが会社更生法に比べて簡易で迅速
- 現経営陣による経営継続が可能
- 事業の継続を前提とした再建計画の策定
適用要件
- 債務超過または債務超過の恐れがある
- 事業継続の見込みがある
- 再建計画の実現可能性がある

会社更生手続き
会社更生法は、経営に困難を抱える株式会社を再建するための法的手続で、債権者数が多く債権額も多額で比較的大規模な会社を想定して定められた制度です。
会社更生の特徴
- 株式会社のみが利用可能で、実際は株主や債権者などが多い大企業が活用することが多い
- 裁判所が選任する更生管財人の主導で進められる
- 手続きが複雑かつ厳格で、再建計画が裁判所に認可されるにも数年を要する
- 株式は全て無価値になり、新たなスポンサーが必要
中小企業における選択指針
民事再生が適している場合
事業に継続価値がある場合
- 顧客基盤が維持されている
- 独自技術や特許を保有している
- 立地条件や設備に競争優位がある
民事再生が適している場合
事業に継続価値がある場合
- 顧客基盤が維持されている
- 独自技術や特許を保有している
- 立地条件や設備に競争優位がある
- 経営陣に再建への強い意志がある
債権者の協力が期待できる場合
- 主要取引先との関係が良好
- 金融機関が再建に理解を示している
- 従業員が事業継続に協力的
破産を選択すべき場合
破産は会社の清算を目的とする法的手続きで、事業継続の見込みがない場合に選択します。
破産が適している状況
- 主力事業の市場が完全に消失
- 債務額が資産価値を大幅に上回る
- 経営陣の健康問題や高齢化
- 後継者が存在しない
法的整理のメリット・デメリット

メリット
債権者平等の原則 全ての債権者が同等に扱われ、一部の債権者からの強硬な取り立てを防げます。
法的保護 手続き開始により、債権者からの個別の取り立てや訴訟が中断されます。
事業価値の保全 民事再生では事業を継続しながら再建を進めるため、顧客や従業員を維持できる可能性があります。
デメリット
信用の失墜 法的整理の事実が公表されることで、取引先や顧客の信頼を失うリスクがあります。
手続きの複雑さ 裁判所への申立てから認可まで、専門的な手続きと時間を要します。
費用負担 弁護士費用、裁判所への予納金など、相当の費用が発生します。
💡最終章:結局倒産した私からのメッセージ
会社が倒産すれば、民事再生だろうと破産だろうと同じようなものだろうと感じるかもしれません。しかし、実際に破産をした私からすれば内容はまったく違います。
どちらも自己破産を免れないとは思いますが、会社の存続、従業員への配慮など、破産したら何も無くなります。倒産が頭をよぎったら、それ専門のコンサルタントなりに相談することをお勧めします。
倒産しなければ問題ありませんが、それを前提とすることを恐れてはいけません。私は怖くて逃げ回っていたため大きな失敗につながりました。
法的整理は決して「失敗」ではありません。むしろ、関係者への被害を最小限に抑え、経営者自身が再起を図るための前向きな選択です。早期に専門家に相談し、最適な手続きを選択することが重要です。
10. まとめ
資金繰りの問題は、どの企業にも起こりうる経営課題です。重要なのは、問題が深刻化する前に適切な対策を講じることです。本記事で解説した内容を改めて整理し、資金繰り改善への道筋を明確にします。
段階別対策の重要性
資金繰り改善には、段階に応じた適切な対策があります。
第1段階:予防と早期対応
資金に余裕がある時期こそ、資金繰り表の作成や取引条件の見直しに取り組むべきです。「まだ大丈夫」と思っている段階での対策が、後の明暗を分けます。
第2段階:積極的な改善策
資金繰りが厳しくなり始めたら、資産売却、在庫削減、経費削減といった即効性のある対策を実行します。同時に、制度融資や日本政策金融公庫への相談も早期に開始することが重要です。
第3段階:金融機関との交渉
新規融資が困難になった場合は、既存借入のリスケジュールや借り換えを検討します。この段階では、金融機関との信頼関係と具体的な改善計画が成否を分けます。
絶対に避けるべき選択

資金繰りに困った際に、以下の選択肢に手を出すことは避けなければなりません:
- 街金融や商工ローンからの高金利借入
- 税金や社会保険料の長期滞納
- 従業員給与の滞納
- 粉飾決算による融資申請
これらは一時的に資金を調達できても、長期的には状況を悪化させ、取り返しのつかない事態を招きます。
経営者としての最後の責任
どれだけ努力しても改善が見込めない場合、法的整理による解決も選択肢の一つです。民事再生や破産は「失敗」ではなく、関係者への被害を最小限に抑える責任ある判断です。
早期に弁護士などの専門家に相談し、従業員や取引先、そして経営者自身の将来を守るための最適な方法を選択することが、経営者としての最後の責任と言えるでしょう。
実体験から学ぶ教訓
本記事に登場した倒産経験者の体験談は、理論では学べない貴重な教訓を含んでいます。資金繰りの問題は、数字の上だけでなく、人間関係や心理的な要素も大きく影響します。
同じ失敗を繰り返さないためにも、これらの生の体験から学び、自社の状況と照らし合わせて適切な対策を講じてください。
資金繰りは企業の生命線です。問題が表面化してから対処するのではなく、日常的な管理と予防的な対策により、持続可能な財務体質を築くことが何より重要です。この記事が、一人でも多くの経営者の助けになることを願っています。
資金繰りの選択肢を知っておくことの大切さ
債権者集会を経験して改めて思うのは、「もっと早く手を打てなかったのか」ということです。
私は当時、資金繰りに困った際にファクタリングという仕組みをよく知らず、結果的にクレジットカードのキャッシングに頼ってしまいました。
もしその時に今の知識があれば、違う選択をしていたかもしれません。
もちろん、ファクタリングが万能の解決策ではありませんし、手数料も決して安くありません。しかし「選択肢として知っておく」ことは重要だと思います。
同じように資金繰りで悩む経営者の方に向けて、私が後から調べた情報をまとめた記事があります:
👉 元経営者が選ぶファクタリング7社比較|資金繰りで悩んだ私が調べた情報まとめ
👉 個人事業主・フリーランスにおすすめのファクタリング5社比較
⚠️ この記事も専門家の監修は受けていません。利用を検討される場合は、必ず税理士・会計士等の専門家にご相談ください。
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※個人の感想です。効果には個人差があります。バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。
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