初心者が作る資金繰り表の基本ステップ|体験談と専門家相談のすすめ

資金繰り表が分からない経営者 経営・資金繰り

「資金繰り表の作り方を知らない……」 「急に銀行から提出を求められて困った……」

このような悩みを抱えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

実は私自身、戦前創業の製造業を20年以上経営する中で、資金繰り表の重要性を痛感した一人です。業績が落ちるまでその存在すら知らず、銀行から提出を求められた時は本当に焦りました。

今回は、私の失敗と学びを交えながら、初心者でもわかりやすい資金繰り表の作り方をお伝えします。これはあくまで私個人の実体験に基づくもので、一つのアプローチとしてご活用いただければ幸いです。

この記事でわかること

  • 資金繰り表の基本概念と必要性
  • 失敗しない資金繰り表の作り方(10ステップ)
  • 実際に使える読み方・分析のポイント
  • 継続するためのシンプル化テクニック

資金繰り表を作る前に知っておくべき基礎知識

資金繰り表が何かを教わる様子

そもそも「資金繰り」とは

資金繰りとは、会社の現金収入や支出に関して、収支の過不足を計算し、管理・調整していくことです。

現在の入出金に加えて、これから起こる現金の出入りを把握するために、収入や支出、残金を「予測」することが「資金繰り」の本質です。

資金繰りが悪化すると、最悪の場合、会社が倒産することもあります。そのため、資金繰りは会社経営において重要な役割を果たします。

資金繰り表とは何か

資金繰り表とは、企業が一定期間の資金の流れを把握するために作る表のことです。販売代金の収入や、仕入代金の支出の事実に基づいて、会社の資金繰りを表します。

シンプルな資金繰り表の例

(単位:万円)10月11月12月
前月繰越500500440
経常収入計200220150
経常支出計150230180
差引過不足550490410
財務収入計505050
財務支出計100100100
翌月繰越500440360

資金繰り表は、会社の現状を表で「見える化」し、経営の継続に必要不可欠な将来の資金の予測を立てることができます。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の主な違いは、分析する対象です。

  • キャッシュフロー計算書:過去の実績を3つの活動(営業・投資・財務)に分けて分析するための資料
  • 資金繰り表:資金の増減について予算と実績を記入することで、将来的な資金ショート(資金不足)のリスクを分析するための資料

キャッシュフロー計算書で過去の資金増減を把握した上で、資金繰り表で将来的な計画を立てるとよいでしょう。

お金が無くなって資金ショートした様子

資金繰り表が必要な理由

資金繰り表は、資金管理を徹底するために必要です。資金繰り表を作成せず、売掛金の代金や入金日の確認を怠ると、諸経費や買掛金などの支払いに必要な現金が不足してしまいます。

具体例で考えてみましょう

10月の売上高が200万円、諸費用が110万円の法人があるとします。帳簿の数字上では、90万円プラス(200万円 – 110万円)となります。

しかし、諸費用(110万円)の支払いが11月で、売上(200万円)の入金が12月とすると、入出金のタイミングにずれが生じます。手元に現預金が100万円しかなければ、11月に資金が足りず支払困難に陥ってしまうでしょう。

このような黒字倒産を防ぐために、資金繰り表による入金日や支払日の管理・調整が不可欠なのです。

【経営者コラム①】複雑すぎるひな型で失敗した話

私はかつて、資金繰り表の作成をすべて経理担当者に任せていました。ところが、その担当者も経験がなく、ネットで見つけた税理士事務所の複雑なひな型をそのまま使っていたのです。

何が問題だったか

  • 項目が多すぎて、私自身も担当者も何が何だか分からない状態
  • 経理担当者は「外れたら責任問題になる」と予測は作らず、実績だけを作成
  • 来月以降の予測は私が作るという、非効率な分業体制

この経験から、資金繰り表は「誰かに任せるものではなく、経営者自身が理解できる形でなくては意味がない」と痛感しました。

資金繰り表作成の準備

資金繰り表作成の準備

準備するもの

資金繰り表を作成するにあたって準備をするものは、以下のとおりです。

  • 表計算ソフトがインストールされたパソコン
  • 決算書(損益計算書・賃借対照表等)
  • 月次試算表
  • 借り入れ返済の予定表
  • 現金・預金出納帳

以上のものが用意できれば、資金繰り表を作成することが可能になります。

2つの作成方法から選ぶ

月次資金繰り表 月単位で収支と月末残高を予測する基本形です。通常は12ヶ月分を作成します。

日繰り表(ひぐりひょう) 日単位で1ヶ月の資金の出入りを細かく記録します。資金繰りが逼迫した際、より詳細な状況を把握するために使われることがあります。

初心者の方は、まず過去の月次資金繰り表から始めることをおすすめします。

資金繰り表の作り方(10ステップ)

ステップ1:表計算ソフトの準備と項目設定

表計算ソフトを開き、以下の基本項目を設定します:

  • 前月繰越
  • 経常収入(売上代金、その他収入)
  • 経常支出(仕入代金、人件費、諸経費、税金)
  • 財務収支(借入金、返済)
  • 翌月繰越

最初に前月繰越残高(先月の資金繰り表を作るのなら、先々月の最終残高)を入力したら、資金繰り表の作成を始めましょう。

ステップ2:前月繰越残高の入力

現金・預金出納帳から前月末の残高を入力します。これが資金繰り表のスタート地点となります。

ステップ3:売上代金の計上

資金繰り表の作成には、会社の収入である「売上の実績」から入力します。

注意点 商品を売却しても、代金が入るまでに時間がかかる場合があります。資金繰り表には、「売上代金が入った月」に入力するようにしましょう。

売上の発生から代金が入るまでの時期のズレを明確にすることができるのも、資金繰り表を作成するメリットです。

売上代金を計上する女性

ステップ4:その他入金の計上

売上代金の他に、補助金や助成金などの売上でないものの収入がある場合には、資金繰り表へ入力します。

ステップ5:仕入代金・材料費・外注費の支出を計上

販売する商品の仕入代金や、商品の製造に必要な材料費、外注費用などの支出を資金繰り表に入力します。

売上代金の計上と同様に、支出するまでに時期のズレがある場合があります。必ず支払った月に入力するようにしましょう。

ステップ6:人件費の支出を計上

人件費として支出した金額を入力します。人件費には、給与の他にも賞与や退職金なども含みます。

ステップ7:諸経費・その他の支出を計上

仕入代金や人件費の他に、諸経費やその他の費用として支出したものを入力します。

諸経費やその他の費用として支出するものには、以下のようなものが挙げられます:

  • 家賃
  • 水道光熱費
  • リース代
  • 保険料
  • 消耗品費
  • 事務用品費
  • 通信費
  • 雑費など
事務用品が色々ある

ステップ8:税金等の支出を計上

法人税や消費税等の支出、社会保険料の支出を入力します。社会保険料は毎月だいたい決まった金額を支出しますが、法人税や特に消費税は年に何回かの大きな支出となります。年間のお金の動きを把握する中で重要な部分です。

ステップ9:設備費用・借入金等の計上

設備売却による入金や、設備購入による支出があれば入力します。

資金を借り入れや返済があればそれぞれ入力します。

ステップ10:計算式の設定と完成

計算式を入力して資金繰り表を完成させます。

重要な計算式

  • 前月繰越 = (前月の)翌月繰越高
  • 経常収入計・経常支出計・財務等収入計・財務支出計 = 対応する項目の合計(SUM)
  • 差引過不足 = 前月繰越 + 経常収入計 – 経常支出計
  • 翌月繰越高 = 差引過不足 + 財務収入計 – 財務支出計

入力作業後、翌月繰越欄がプラスとなれば黒字倒産などのリスクは大幅に軽減されます。一方、マイナスになれば資金不足ということになるので、対策を講じる必要があります。

過去の会計データを元に、1年分の資金繰り表を作ってみると全体の流れが分かって参考になります。特に季節特有の支出もはっきりしてきますので、資金繰りの予定表が作りやすくなります。

【経営者コラム②】私がたどり着いたシンプル手法

会社の経営が厳しくなってくると、月内での資金の動きにもしっかりと注意を払うことが必要になってきます。そのために、日繰り表という毎日の資金繰り表を作るのですが、これがとても大変でした。過去分を作成するのも来月の予想をするのも、1日単位での動きは細かすぎて分かりません。

私の会社の場合、経理担当者が退職し私が経理を兼務することになった時、自分なりのシンプルな資金繰り表(日繰り表)を作成しました。

5日単位集計の発見

日付1日5日10日15日20日25日
入金合計100200150
支出合計5080120100
残高450550470550550500

毎日ではなく5日ごとに集計することで、お金の動きが把握しやすくなりました。この形式で金融機関に提出しても、一度も問題になったことはありません。まずは練習で、会計ソフトから総勘定元帳の当座預金(収入と支出のメイン科目)の前月を出力して、入れ込んでみると感覚がつかめます。

詳しい作り方はこちら
シンプル資金繰り表の作り方では、実際に私が使っていた具体的なフォーマットと作成手順を詳しく解説しています。

資金繰り表の読み方と分析ポイント

ここがポイントと教えるインストラクター

基本構成の理解

資金繰り表は主に「経常収支(経常収入・経常支出)」と「財務等収支(財務等収入・財務等支出)」で成り立っています。

  • 経常収支:本業でいくらお金を稼いでいるか
  • 財務収支:お金をいくら借りていくら返したか

なお、書式によって、設備投資や資産売却などの収支を別途「経常外収支」という項目にまとめているケースもあります。

重視すべきポイント

資金繰り表を確認する上で、重視するべきポイントは以下の通りです。

1. 経常収支がプラスか 経常収支(経常収入 – 経常支出)がマイナスであれば、本業をしても現金が減っていくことを意味します。

2. 翌月繰越残高に余裕があるか 繰越残高に余裕がなければ、返済困難な状況に陥ります。

3. 返済原資と財務収支のバランス 返済原資(経常収支 + 設備投資や資産売却などの収支)と財務収支のバランスを確認することも大切です。財務収支がマイナスの上に、返済原資もそのマイナス分を下回っていれば手元資金から返済していることになります。

資金繰り表(予定表)作成時のポイント

資金繰りに大事なところを書き出す

現金の入出金を3つに区分

資金繰り表(予定表)では、現金の入出金を以下の3つに区分しましょう。

1. 経常収支 売上・仕入などの事業を営む上で発生する収支になります。経常収支は、損益計算書を参照します。

2. 財務収支 借入や返済、定期預金など、直接営業活動と関わりのない部分の収支になります。財務収支は、賃借対照表の右側にある借入金の欄を参照します。

3. 経常外収支 助成金、保険金の収支、設備投資、売却などの投資を指します。その他の収入として、経常収支に含まれる場合もあります。

予測の金額とタイミングのコツ

資金繰り表(予定表)を作成するうえでは、「収支を予測する金額とタイミング」が重要です。

収入・支出の金額と時期が明確でない場合は、次のポイントを意識して予測してみてください。

  • 収入の金額とタイミングは少なめ遅めに予測する
  • 支出の金額とタイミングは多め早めに予測する

以上のように硬めに予想することで、多少予測がずれても資金が足りなくなることを防ぐことができます。また金融機関に提出する時などは、特に下ブレを嫌がられますので硬めに予測しておいたほうが安心です。

【経営者コラム③】理解するため、シンプルこそが最重要

正確さよりも全体像の理解を重視してください。細かな数字に完璧さを目指すより、まず大きな流れをつかむことが大切です。私が事業停止を決断できたのも、この表が現実を突きつけてくれたからでした。

経営に活かすための心得

  • 正確さよりイメージ:完璧を目指すより、流れをイメージできることが大切
  • 肌感覚の見える化:数字を日々追うことで、資金の流れを身体で感じられるように
  • 予測の習慣化:「このままいけばどうなるか?」と常に未来を考える習慣を

どんなにシンプルでも、全体をしっかりと把握する事が何より重要なのです。

資金繰り表のメリット

経営改善を表す招き猫

経営改善につながるメリット

資金繰りの改善点が見つかる 売上高や各利益が記載されている損益計算書を確認すれば、自社が黒字か赤字か確認できます。しかし、現預金が不足しているか、今後も資金に余裕があるかまでは把握できません。

資金繰り表を作成すれば、将来的な資金の増減を見通せます。売掛金の回収サイトが遅い、買掛金の支払サイトが早いなど、資金繰り面の課題も把握できるでしょう。

早めに資金繰り面の課題に気づき、取引先と支払期日や入金期日を交渉する、金融機関から資金調達するなどの対策をあらかじめ講じておけば、資金不足に陥る事態を防げます。

資金繰り対応は経営においては小手先のテクニックに過ぎませんが、現実問題として大切なことです。

金融機関対応でのメリット

融資審査がスムーズになる 資金不足を防ぐためには、銀行から資金を調達することも検討しなければなりません。しかし、融資には審査が必要なため、経営成績や財務内容次第で借りられないこともあるでしょう。

資金繰り表を作成すれば、将来的な資金計画や売掛金の回収見込みを明確に伝えられます。その結果、銀行側はなぜ借入が必要なのか、返済見込みはあるのかなどを確認しやすくなるでしょう。銀行側が必要とする資料を先に提出することで、融資判断にプラスに働く可能性もあります。

作成サービスの選択肢

資金繰り表は、パソコンを使って表計算ソフトに入力していくのが一般的ですが、その他にも便利なサービスがあります。

表計算ソフトで計算式を自作

手軽に始められ、自分の事業に合わせてカスタマイズが可能です。計算式を一度設定すれば、毎月の数値入力だけで資金繰り表が完成します。

会計ソフトの活用

会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)を利用している場合、過去の実績データから資金繰り表の基礎となる情報を取得できます。

ただし、完全自動での資金繰り表作成は困難なのが現実です。私は過去に弥生会計を使っており、少なくとも過去の実績に関しては自動で資金繰り表を吐き出してくれるものかと思っていましたが、設定が悪かったのか上手に使えませんでした。

表計算ソフトに入力すべきデータは整理して出力できますので、その部分は使うと便利です。

専門業者への依頼

仕事ができる税理士

資金繰り表をより精度高く作成し、適切な分析を行うためには、税理士などの専門家への相談を強く推奨します。

将来の資金を予測することは複雑で、特に3ヶ月を超える長期予測では、専門的な知識と経験が重要になってきます。独力での作成には限界があることを理解しておくことが大切です。

資金繰りの専門知識を持つ税理士に相談することで、より信頼性の高い資金予測や分析が期待できます。ただし、予測には不確実性が伴うことも念頭に置いておきましょう。

また、資金繰り改善策や資金調達に関しても、税理士からの専門的なアドバイスを受けることで、より適切な対策を検討できる可能性があります。

私自身、顧問税理士がいながら早期に相談しなかったことを反省しており、同じような状況の方には早めの専門家相談をお勧めしたいと思います。

※ 重要な経営判断を行う際は、必ず税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。企業の状況により最適なアプローチは異なります。

まとめ:見える化の第一歩から始めよう

資金繰り表は、経営状況を数値で把握するための一つのツールです。

今回ご紹介した主なポイント

  • 資金繰り表は将来の資金状況を把握する手段の一つ
  • 継続して作成することが重要
  • 経営者自身が理解できる形で作成することが大切
  • 予測には不確実性が伴うことを理解する

「今月の資金状況はどうか?」を数値で把握できるようになることは、経営判断の一助となる可能性があります。

ただし、どんなにシンプルでも、まずは継続することから始めてみてください。そして、より専門的な分析や対策については、必ず税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

最終的な注意事項

  • 本記事の内容は筆者の個人的な体験談と一般的な情報提供です
  • 具体的な経営判断や財務対策は専門家にご相談ください
  • 企業の状況により最適な手法は大きく異なります
  • 資金繰り表の作成や解釈についても、税理士等の専門家の指導を受けることを強くお勧めします

資金繰りの選択肢を知っておくことの大切さ

債権者集会を経験して改めて思うのは、「もっと早く手を打てなかったのか」ということです。

私は当時、資金繰りに困った際にファクタリングという仕組みをよく知らず、結果的にクレジットカードのキャッシングに頼ってしまいました。

もしその時に今の知識があれば、違う選択をしていたかもしれません。

もちろん、ファクタリングが万能の解決策ではありませんし、手数料も決して安くありません。しかし「選択肢として知っておく」ことは重要だと思います。

同じように資金繰りで悩む経営者の方に向けて、私が後から調べた情報をまとめた記事があります:

👉 元経営者が選ぶファクタリング7社比較|資金繰りで悩んだ私が調べた情報まとめ

👉 個人事業主・フリーランスにおすすめのファクタリング5社比較

⚠️ この記事も専門家の監修は受けていません。利用を検討される場合は、必ず税理士・会計士等の専門家にご相談ください。

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※個人の感想です。効果には個人差があります。バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。

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