この記事について
この記事は、実際に30名の従業員を抱えた会社の破産を経験した経営者の個人的な体験談です。破産手続きや制度は個別のケースや時期によって大きく異なるため、具体的な法的判断や手続きについては必ず弁護士などの専門家にご相談ください。あくまで一つの参考事例として、同じような状況に直面する経営者の方に少しでもお役に立てればと思い、体験をまとめています。
会社が破産したとき、最も重い責任を感じるのは従業員への未払賃金です。私の経験では、未払賃金は従業員に渡してから破産する方が良かったと感じています。
今回は、私の実体験をもとに、破産時の未払賃金と解雇予告手当の現実、そして経営者が事前に知っておくべき教訓をお伝えします。
1. 【体験談】破産を避け続けた経営者の現実

※以下は私の個別ケースでの体験です
1-1. 従業員30人程度の未払給与なら現金の確保はできると計算していた
「従業員の給与は最も優先される」という話を聞いていた私は、「会社には未払賃金分くらいの現金は残っているだろうし、優先度が高いということは支払いの時期も最優先で行われるのだろう」と高を括っていました。つまり、破産後すぐにでも現金で従業員に支払えると思い込んでいたのです。
しかし、実際に30人の従業員を抱えて破産に直面したとき、その考えがどれほど甘かったかを痛感しました。一般的に給料の計算は締め日と支給日にズレがあるので、どのタイミングで破産しても未払賃金は発生します。そして、未払賃金の優先順位が高いのは「配当の際の順番」であって、「支払いの時期」ではありません。すべての債務と資産の計算が終わるまで、どんなに優先度が高くても配当は実行されないのが現実です。
経営者たるもの「破産」なんて考えたくないものです。しかも経営がギリギリで、毎日「破産」という恐怖が背後から迫ってきているのに、それに向き合うのは本当に困難なことです。
実際、私が弁護士に相談したのは営業停止のわずか2週間前でした。この判断の遅れが、後に多くの問題を引き起こすことになります。
2. 【実体験】未払賃金で直面した想定外の現実

※以下は私の個別ケースでの体験です
2-1. 準備不足が招いた従業員への影響
破産手続きでは、未払賃金があってもすぐには支払われません。債務と資産が確定し、債権者との話し合いや裁判所の許可を経て初めて分配が始まります。このプロセスは、私のケースでは数ヶ月を要しましたが、通常なら1年以上かかることもあると後から知りました。
私の会社では従業員30人(パートさんが多め)で、未払賃金の総額は約250万円でした。金額的な優先順位は高いのですが、時間的にはすべて同じです。従業員の生活を考えると、この時間の長さは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
2-2. 立替払制度の手続きで3ヶ月以上かかった理由
日本には「未払賃金立替払制度」があり、独立行政法人労働者健康安全機構が未払賃金の一定割合(最大8割)を立て替える制度があります。しかし、この手続きが想像以上に複雑でした。
私の会社では現在進行中ですが、3ヶ月以上かかる見通しです。その理由は:
- 通勤手当や役職手当まで日割り計算が必要
- 仮名目で支払っていた手当があると労働者健康安全機構や管財人から追求がある
- 出勤日数と有休の合計が所定日数より多い従業員の計算ミス
- 各種書類の不備による再提出
普段は簡略化していた給与体系が、こんな時には本当に面倒なことになります。
2-3. 通勤手当の日割り計算まで求められた複雑さ
特に困ったのは、他の人とのバランスから便宜上一定の金額を「手当」として支払っていた人がいて、それを未払い賃金のときには「給与」で計算していた矛盾を突かれたことです。管財人からは「この手当の性質は何ですか」「実質的に基本給ではないですか」といった細かい質問が続きました。
また、出勤日数と有給休暇の合計が所定労働日数より多い従業員がいて、その説明にも時間を取られました。普段は「だいたいで」処理していたことが、破産手続きでは一つ一つ正確に説明する必要があるのです。
3. 【失敗談】解雇予告手当の重い負担と優先順位の誤解
※以下は私の個別ケースでの体験です
3-1. 1ヶ月分の追加負担という想定外の現実
破産では、解雇予告手当も大きな課題です。突然の解雇の場合、1ヶ月分の給与を別途支払う義務があります。私の会社では約500万円が必要でした。
未払賃金250万円に加えて、解雇予告手当500万円。合計750万円という金額は、破産直前の会社には到底準備できない金額でした。
3-2. 「優先順位が高い」の意味を誤解していた私
「従業員の給与は最も優先される」という話から、解雇予告手当も同様に優先されると思い込んでいました。しかし、実際は解雇予告手当は未払賃金と違い、配当の優先順位がそれほど高くありません。
大きな負債を抱えて破産する中、解雇予告手当まではなかなか支払えないのが現実です。
3-3. 結局支払えなかった解雇予告手当への後悔
未払賃金については立替払制度で法律通り8割は先に出る予定でしたが(記事執筆時点ではまだ従業員の手元には届いていません)、解雇予告手当については、結局満足に支払うことができませんでした。
これは今でも大きな後悔として心に残っています。
4. 【経験から学んだ】制度の仕組みと実務の現実

※以下は私の個別ケースでの体験です
4-1. 未払賃金立替払制度の本当の流れ(体験ベース)
理論上は以下の流れです:
- 管財人が選任される
- 財務状況が整理される
- 労働者健康安全機構への申請
- 審査・承認
- 立替払い実行(未払賃金の8割)
しかし、実際は各段階で想定以上の時間がかかります。特に3と4の段階で、給与体系の詳細な説明や書類の補正が何度も求められ、私の場合は3ヶ月以上かかる見通しです。ただし、これはケースによって大きく異なると思われます。
4-2. 管財人とのやり取りで見えた手続きの実態
管財人との面談では、想像以上に細かい点まで質問されました:
- 「この手当の名目は何ですか?実質的に基本給の一部ではありませんか?」
- 「有給休暇の管理はどのようにしていましたか?」
- 「この従業員の勤務実態を具体的に教えてください」
賃金台帳と出勤簿、タイムカードなど一式を提出して精査されるので、普段の経営では「だいたい」で済んでいたことが、法的手続きでは一つ一つ正確な根拠が求められるのです。
5. 【後悔と教訓】もっと早く知っておくべきだった対策
※以下は私の個別ケースでの体験です
5-1. 弁護士相談を避けていた理由と後悔
営業停止の2週間前になってようやく弁護士に相談しました。相談先は大学の先輩のつながりで、企業法務が専門かどうかの確認もしていませんでした。
もっと早く、できれば2ヶ月前には相談していれば、お金の準備や従業員への対応をしっかり計画できたはずです。しかし、経営者として「破産」を前提とした相談をするのは、心理的にとても困難でした。
5-2. コンサルや税理士では対応できなかった現実
普段お世話になっていたコンサルタントや税理士は、私の破産後の処理には登場しませんでした。生々しい破産手続きの現場経験は少ないのが現実だと思います。
「経営」と「弁護士」はあまり関係なさそうに見えますが、会社を活かすか潰すかという場面では、その分野が専門の弁護士でないと詳しいアドバイスは期待できません。
5-3. 「最悪のシナリオに備える勇気」の重要性
正体のわからない「破産」という漠然とした恐怖よりも、自分が取れる選択肢を広く知っておくことは、その後の判断に有意義だと思います。
知っておけば取れる手段も変わってきます。ぜひ余裕のある内に調べることをお勧めします。
6. 【経営者へのメッセージ】私と同じ後悔をしないために

※以下は私の個別ケースでの体験です
6-1. 事前準備の重要性
営業停止当日の朝10時頃に従業員に破産を伝えました。従業員からは「給料がいつ出るのか?」「なぜ破産なのか?民事再生は無理だったのか?」「雇用保険の手続きはどうなるのか?」といった質問を受けました。
当日は知識不足で質問に対してまともに答えることもできず、「3週間くらいで未払いの給与は払える」と間違った説明をしてしまい、後から弁護士に確認して一斉メールで訂正する羽目になりました。このような後手後手の対応は、従業員の不安を更に大きくしてしまいます。
6-2. 専門家選びのポイント
弁護士選びでは、企業破産の実務経験が豊富か、労働問題に詳しいか、立替払制度の手続きに精通しているかを確認すべきでした。普段お世話になっていたコンサルタントや税理士では、破産手続きの現場経験は限られているのが現実です。
6-3. 従業員への配慮
健康保険証の切り替えなど、破産が決まった瞬間から従業員の生活に直結する手続きが山のように発生します。これらの実務を事前に把握し、可能な限り準備しておくことが、従業員への最低限の責任だと思います。
7. 体験談のまとめと注意点
破産から2ヶ月が過ぎた今でも、実務でバタバタしており、つらい気持ちは続いています。ずっと早い時期に大胆な手を打てば、破産は免れたかもしれません。
しかし、今振り返ってみて正直に思うのは、「今戻ったとしても、また『何とかなるのでは?』と苦心惨憺して同じ道をたどる気がする」ということです。これが経営者の性なのかもしれません。
だからこそ、経営が安定している時に「最悪のシナリオ」を想定し、従業員を守るための準備をしておくことが重要なのです。
重要な注意点
この記事は一人の経営者の個人的な体験談です。破産手続きや制度の運用は:
- 会社の規模や業種によって大きく異なります
- 法改正や制度変更の影響を受ける場合があります
- 地域や管財人によって実務の進め方が変わることがあります
- 個別の事情により必要な手続きや期間が変動します
私のような後悔を繰り返さないでください。専門家への相談や情報収集を、今日から始めてみませんか?従業員と自分自身を守る第一歩は、「知ること」から始まります。
具体的な法的判断や手続きについては、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。
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