今回は、メインの銀行からM&A仲介業者を紹介され結局は実らなかった経験と、その理由や注意点についてお話します。

中小企業のM&Aを迫られたきっかけと銀行の通告

ある日突然、メイン銀行から融資の打ち切りを告げられ、事業再建をあきらめてM&A業者を通じて事業を譲渡し、経営から退くように通告されました。

通告の内容は以下のようなものでした。

  • 事業全体と従業員の雇用を守る条件で、他社への事業譲渡をする
  • 社長は経営から退く
  • 銀行は負債を大幅にカットし、M&Aに全面協力する
  • 社長は連帯保証人としての責任があるので自己破産する
中小企業のM&A

M&Aとは

M&A(合併・買収)とは、企業が他社と統合したり、株式や資産を買収して経営権を取得したりする手法です。私の場合は買収に近い形で、銀行の債権放棄を伴う事業譲渡でした。

当時のメイン銀行の判断では、「融資を打ち切って6ヶ月は会社を維持できるがそれ以上は無理。 それまでに譲渡先を見つけて話を進める」 というものでした。

M&A仲介業者の役割と初期の面談プロセス

その後、銀行からM&Aの仲介業者が選定され、最初の打ち合わせが行われました。 M&A成立までのスキームは以下のようなものです。

  1. 社名や詳しい情報は伏せて、地域とか業態だけを開示し興味がある会社を広く募集する
  2. 興味を持った会社から打診があったら、まずその情報を私と共有し進めるかどうかを判断をする
  3. 進めることになったら詳しい情報を先方に開示し、さらに取り組むかどうかを判断してもらう
  4. 具体的に取り組むことに決まったら、先方が私の会社に訪問し詳しく検討を進める
  5. 先方に対してM&Aに関する全ての条件を出して、成立の可否を判断してもらう

私の会社には大きな負債がありましたので、銀行がどの程度それをカットできるのか? 買取金額はいくらになるのか? が最終的な問題でした。

中小企業のM&Aにかかる費用と注意点

M&Aの仲介業者にかかる費用は、基本的に成功報酬でしかも買い取った企業の金額に上乗せされるので、こちらの支払いはありません。 ただ、最初の手付金が50万円くらいかかったのと、仲介業者の担当者が来社する度に交通費を請求され、これが高額になったのを覚えています。

M&A候補A社:有望だったが失敗に終わった理由

私の会社を訪問し面談にまで至った買い取り候補の会社を2社紹介していきます。

まず1番目のA社は色々な企業をM&Aで買収しひとつのグループとして運営している会社で、私が見た中ではもっとも可能性が高い会社でした。

私の会社と近い業界で業績も非常に優れており、個々のグループ会社は小規模ながら、全体としてのパワーは大きく強固な信頼性を感じました。

面談には先方の役員さんも同席し、「これから長い付き合いになるから」とまで言われたのですが、結局は不調に終わりました。 理由については開示しないルールでした。

M&A候補B社:業種違いの企業との交渉の結末

2番目のB社は全国にレストランを展開している会社で、私の会社とは業種が違ってはいたのですが商材的に関連もあったので興味を持たれたのだと思います。

この会社もかなり前のめりで、社長さんと奥様とが来社し社内を見て回って「ここは、ああしよう」とか「ここはこうしよう」とか、具体的なことまで考えていらっしゃいました。

特に奥様のほうが乗り気で、現場ではさかんに社長さんにプッシュされていたのですが、最終的には不調に終わりました。

中小企業のM&A

中小企業のM&A交渉が難航した理由

その後も何社かが興味があるとのことで、仲介業者がアポイントしてきましたが面談にもこぎつけず、どの会社もM&A成立までは届きませんでした。 

M&Aを断念し自主再建を選んだ経緯

M&Aの仲介業者から何度も会社を紹介されては不調に終わるというのを繰り返す度に、私のメンタルは疲弊していきだんだん当てにならないと思うようになりました。

メインの銀行が設定した6ヶ月という期間はあっという間に過ぎ去り、私はなんとか自力で会社を維持する日々が続いていました。 

そして、いつまでも結論に至らない状態が嫌になり、メインの銀行にM&Aをあきらめ自力での再建をめざすと伝えました。

銀行側も担当者や支店長が転勤になり、当時の迫力は無くなっていました。 申し送りしていたとは思うのですが、あの時の危機感は引き継げないだろうと思います。

中小企業のM&A

中小企業のM&Aと私的整理の現実:失敗から学んだこと

という事で、私の会社の危機に際してM&Aを試みたけども上手くいかなかったというお話をさせていただきました。 文中ででてきましたA社さんもB社さんも、かなり前向きに検討して頂いていたので残念でした。

理由については知らされていないのですが、多額の負債があるというのがかなりの足かせになったであろうことは容易に想像できます。

当初、M&Aの仲介業者からの説明では「それでも上手くいく」と力説されたのですが、簡単では無いです。 ここではM&Aと表現しましたが、実際には裁判所を介さない「私的整理」に近い手続きでした。(「私的整理」とは、債務者が債権者と直接交渉して債務を整理する手法です。) 

結局、私の会社は破産という最悪の状態に陥ってしまい、今考えるとこの時点で「民事再生」という選択肢もあったのかもと思います。

ここまでお読みいただきありがとございました。

私の経験が、M&Aや事業再生を検討する皆さんの参考になれば幸いです。