「倒産はある日突然やってくる」と言われますが、実際には必ず”前兆”があります。
資金繰りが急に苦しくなり、銀行の態度が変わり、社会保険料や源泉税の支払いが遅れ始める。
私自身も、この小さな兆候を「まだ大丈夫」と見誤り、大きな判断ミスを繰り返しました。
この記事では、倒産前に必ず知っておくべき資金繰りの限界ライン・赤字の本質・売掛金・社保滞納・銀行対応などを、体験者の視点で総まとめとして整理しています。
「もう限界なのか?」「何から手をつければいい?」
そんな不安を抱えている方のための”入口となる1本”です。
※本記事は著者の実体験に基づくドキュメンタリーです。資金繰り対策は法律・会計・税務に関わる重要な判断を伴います。個別の判断については、必ず税理士、会計士、弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事を読むべき人|あなたの”今の状態”は?
この記事は、以下のような状態にある経営者に向けて書かれています。
銀行に頼りたいのに、返す見通しがない。 資金繰りが苦しくなると、つい「誰かお金を貸してくれないか」と銀行に頼ろうとします。メイン行がダメなら他の銀行も、という心理になります。でも心の奥では「返す見通しはない」と感じている。その葛藤の中にいる状態です。
社会保険料が膨らんでいて不安。 最初は「1回遅れるだけ」と思っていても、月を重ねるごとに滞納額が増えていく。その一方で「会社が立て直せれば返せるだろう」という根拠のない期待を持ち続けている状態。実は、これが最も危険です。
銀行から経営計画書の提出を求められた。 資金繰りが悪化すると、銀行からいきなり「経営計画書を出してください」と言われるようになります。その時点で既に銀行の信用は揺らいでいます。この段階から急速に厳しくなります。
来月の資金が尽きるか、尽きないかで判断している。 もう単月ごとの資金繰りしか見えていない。3ヶ月先、半年先の見通しなど立たない。毎日が綱渡りの状態。「会社をたたむかどうか」を月単位で判断している。
弁護士に相談しようか迷っている。 ここまで来ると、畳むならすぐに相談した方がいいと気づきます。でも踏ん切りがつかない。その判断の入口にいる状態です。
もし上記の1つでも当てはまるなら、この記事はあなたのためのものです。
倒産は”前兆”で分かる|見落とされがちな3つのサイン
① 資金繰り表の数字がじわじわ悪化する
- 売上は横ばいなのに資金残高だけが減る
- 月末の資金ショートが当たり前になる
- 売上入金より支払いが先行している
資金繰り表を作っていても、その変化に気づかないケースは多いです。
私自身、年間の資金繰り表は作っていましたが、日々の変化には鈍感でした。
ただし、自分で資金繰り表を作っていた人ほど、実は予感は当たります。私の場合、半年くらい前から「これは無理かもしれない」という予感がありました。 在庫処分などの対策も打っていたし、工夫もしていました。でも効果が出ない。そうなると諦めがつくんです。「これはもう無理だな」という確信に変わる瞬間があるんですよ。
その予感を無視して突き進もうとするから、さらに状況は悪くなるんです。
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② 銀行の対応が目に見えて変わる
- 担当者が急に丁寧になる
- 「経営計画を出してください」と言われる
- 融資の相談に対して”否定”が増える
銀行は数字を見ています。態度が変わった時点で、すでに信用は揺らいでいます。
銀行の対応が変わるのは、決算書や月次の数字を見て「あ、ヤバいな」と気づいた時です。その瞬間から対応が変わります。丁寧になったり、厳しくなったり。表面は変わりませんが、内部では既に格下げされている可能性が高いんです。
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③ 社会保険料・源泉税の滞納が”癖”になる
- 1回遅れると、その後もズルズルいく
- 1年で1000万以上溜まってしまうこともある
- 放置すると倒産より先に”動けなくなる”
社保滞納は、倒産後も追いかけてくる”逃げられない負債”です。
滞納が始まるきっかけは、実は些細なことが多いです。私の場合は、新しく変わった経理担当者が自動引き落としを停止したことがスタートでした。資金繰りの手段として認識したわけです。コロナの時の猶予措置もあったので「いずれ返せばいいか」という気持ちもありました。
でも一度止めてしまうと、その後はズルズルいくんです。月10万、20万…やがて月50万、100万。気づいた時には取り返しがつかない額になっています。私の最終的な社保滞納は6000万円まで膨らみ、倒産4日後に売掛金の差し押さえを受けました。
最初の遅れは「一時的」と思っていても、それが癖になると本当に恐ろしいことになります。
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① 売上拡大に逃げて、赤字の本質を見ない
私自身の体験談にもある通り、
「売上を伸ばして赤字を解消しようとしたら、さらに赤字が膨れた」
これは倒産企業の定番パターンです。
- 原価率・粗利率を確認せずに売上を追う
- 利益が出ない商品を増やしてしまう
- 人件費・固定費が膨らんだまま突き進む
売上19億から3億まで縮小した私の会社も、15期連続赤字でした。
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② その場しのぎの資金繰りが”上達してしまう”
- 支払いをずらす
- 口座間で資金を回す
- 売掛金を前借りする
- 社保を優先順位の後ろに回す
やっている本人は「まだイケる」と錯覚しますが、実際には改善ではなく”延命”。これらは根本的な解決ではなく、その場凌ぎの緊急避難的な措置に過ぎません。
給料日3日前に50万円不足してキャッシングを使ったこともありました。これらの行為は法的なリスクを伴う場合もあり、結局のところ状況をさらに悪化させるだけです。
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③ コンサル選びを間違えて時間だけ失う
- 「売上を伸ばせ」というトンチンカンな指示
- 固定費削減の本丸に触れない
- 机上論だけで現場に合わない
優秀なコンサルでも、会社の状況に合わなければ意味がありません。
私も半年で解任した経験があります。
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倒産前にやるべき「本質的な対処」5つ
① 赤字の根本原因を数字で特定する
- 粗利率の低下
- 固定費の過剰
- 人件費の肥大化
- 不採算部門の存在
ここを明確にすると、倒産回避の道が見えてきます。
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② 固定費の抜本的な見直し
倒産寸前期は、売上より固定費の方が致命傷になりやすい。
- 人件費をどう最適化するか
- 店舗・倉庫の整理
- 在庫圧縮
- 不要支出の即時停止
私の場合、従業員30名を抱えたまま最後まで固定費を削れませんでした。
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③ 社会保険料・税金の優先度を上げる
- 社保滞納は”逃げられない負債”
- 猶予してくれるが、1年以内に返せないと詰む
- まずは役所と早めに相談
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④ 得意先へ早めの入金依頼も試す価値あり
- 頼んで効果がある金額になるか
- 信頼関係はあるか
- 希望をしっかり具体的に伝える
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⑤ 最悪のケースを前提に”出口”も同時に考える
倒産を回避するためには、同時に「最悪の場合」も考えておく必要があります。
銀行融資とリスケジュール 私の場合、10年以上前からリスケジュール(返済条件の見直し)を活用していました。それは長期間有効でした。ただし、リスケは「延命」であり「解決」ではありません。赤字体質が改善しなければ、いずれ銀行も手を引きます。
M&A・事業売却 銀行から何度もM&Aの提案がありました。仲介業者からも色々な企業を紹介してもらいました。でも全て不調に終わりました。事業売却は理想的な出口に見えますが、実現は極めて難しいというのが現実です。
活性化協議会 これは最後の賭けのような感じでした。費用も50万円かかりました。複数の銀行が参加してバンクミーティングも開催されます。でも結果として効果は出ませんでした。
破産という選択 銀行融資が詰まり、M&Aも不調に終わり、活性化協議会も効果がなくなったら、倒産という選択肢も視野に入ります。倒産は「終わり」ではなく「リセット」です。
重要なのは、タイミングです。 リスケを始めるタイミング、M&Aを検討するタイミング、弁護士に相談するタイミング——これらは会社によって全く異なります。銀行との関係、業界の状況、経営者の体力。それらによって判断基準は全く変わるんです。
ただし一つ言えることは、「もしかしたら?」と思った段階で専門家に相談する方が、選択肢が残ります。 ギリギリまで動かないと、選択肢がゼロになってしまう。会社を畳むなら、早めに弁護士に相談した方が、その後の処理もスムーズです。
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【限界ライン(レッドカード)】
翌月の支払いのために、消費者金融やビジネスローンを検討し始めたら、自力再建はほぼ不可能です。その段階で、躊躇せずに弁護士に相談してください。 この時点で相談すれば、まだ破産以外の選択肢も残っています。ここまで来てから動くと、選択肢がゼロになります。
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よくある質問|倒産前のリアル
Q. 社会保険料の滞納は、どこまで許される?
A. 許されるものではありません。ただし役所は猶予制度を用意しています。重要なのは「相談すること」です。放置すると、あなたが想像する以上に金額が膨らみます。
Q. 銀行の態度が変わったら、もう終わりなのか?
A. そうとは限りません。ただし、その時点で銀行は既に あなたの会社を「要注視先」として扱っています。隠すのではなく、早めに経営計画を示して信頼を回復する努力が必要です。
Q. 会社を畳むと決めたら、すぐに何をすべき?
A. 弁護士に相談してください。破産手続き、従業員への対応、債権者への通知など、やることが多くあります。専門家の指導を受けながら進める方が、後の処理が円滑です。
Q. 資金繰りが苦しくなったら、リスケを始めるべき?
A. リスケは銀行との関係が良いうちに、協議するものです。銀行が既に距離を置いている段階では難しくなります。早めの相談がカギです。
Q. 弁護士に相談するのに、いくらかかるのか?
A. 相談料から着手金、成功報酬まで、弁護士事務所によって大きく異なります。ただし最初の相談は無料という事務所も多いので、まずは問い合わせてみてください。
まとめ|倒産は止められる。だが”放置”が最大のリスク
倒産は突然起きるものではなく、必ず前兆があり、改善できるポイントもあります。
ただし――
何もしないまま時間だけが経つと、取り返しがつかなくなる。
私自身の体験がまさにその証拠です。
この記事を入口にしながら、
- 売掛金回収の具体策
- 社保滞納の対処
- 銀行との交渉
- 固定費削減
など、関連記事を読み進めていただくことで、あなたの会社の状況に合った解決策が見つかるはずです。
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この記事があなたの会社を守る一助になれば幸いです。
**※ 本記事は、筆者の経営経験に基づいた体験談であり、法律、税務、会計上のアドバイスではありません。資金繰り対策は法律・会計・税務に関わる重要な判断を伴います。実際の対策や判断については、必ず税理士、会計士、弁護士などの専門家にご相談ください。この記事の内容を参考にして生じた損害について、筆者は一切の責任を負いません。


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