会社倒産時の電気・水道・ガスはいつ止まる?継続利用の手続きと実例

会社倒産時の実務

会社の倒産手続きを進める際、多くの経営者が「電気や水道、ガスはいつ止められるのか?」という不安を抱えます。破産手続き中でも事務所への出入りは必要で、インフラが使えないと業務に支障をきたすためです。

本記事では、会社倒産時のインフラ供給継続について、法的な仕組みと実際の手続き、そして筆者が実際に体験した倒産プロセスでの詳細な実例を交えて解説します。

結論:管財人と供給会社の合意により継続可能

会社倒産時でも、電気・水道・ガスは管財人と各供給会社の合意により継続利用できます。

破産開始決定後も以下の理由でインフラは必要です:

  • 破産財産の管理・処分作業
  • 債権者集会や関係者との打ち合わせ
  • 書類整理や引き継ぎ業務
  • 施設の維持管理

私が体験した倒産時のインフラ停止・継続の実録

電気・水道・ガス料金の督促状と書類

営業停止決定から破産申請まで:支払いストップの決断

営業を停止することを決めた時、私は真っ先に「これからかかる経費をどこまで払うべきか」で悩みました。従業員への給与は最優先でしたが、水道光熱費については「もう払えない」というのが正直なところでした。

営業停止と同時に、電気・水道・ガスの支払いをすべてストップしました。「督促状が来るだろうな」と覚悟していましたが、その時点で「今後は一切何も見ない!」という投げやりな気持ちになっていました。

案の定、数日から数週間後に各社から督促状が届き始めました。あらゆる取引先から来た封筒の山を見ると具合が悪くなりましたが、全て開封せずに管財人に渡しました。

管財人との初回面談:インフラ継続の相談

破産申請後、管財人との初回面談でインフラの件も大事な相談事項でした。

「電気とか水道とかは、どんな感じになりますかね?」

管財人の弁護士は慣れた様子で「それぞれの供給会社に連絡して、継続利用をお願いしてみます。ただし、今後の利用分は破産財団から別に支払うことになります」と説明してくれました。

この時初めて「ああ、まぁ何とかなりそうだな」と少しホッとしたのを覚えています。

電気継続の予想外の大問題:保安会社の契約解除

工場の変電設備と高圧受電設備

私の会社は製造業だったため、大きな設備で大量の電気を使っていました。そのため社内に変電設備があり、電気保安会社と契約して定期的な点検を受けていました。

ところが、会社が倒産したことで既存の電気保安会社から「契約解除します」と一方的に通告されました。管財人が継続をお願いしても「倒産した会社とは契約できません」とあっさり断られてしまったのです。

問題は、この電気保安会社がいないと電力会社との供給契約ができないことでした。つまり、電気保安会社が見つからなければ電気が完全に止まってしまうのです。

「これは想定外だった…」と管財人も困った様子でした。

新しい電気保安会社探し:管財人の奔走

管財人は複数の電気保安会社に連絡を取ってくれました。大手はやはり「倒産案件は扱わない」という方針だったようです。

最終的に、小さな電気保安会社が「管財人案件なら」ということで引き受けてくれることになりました。管財人から「何とか見つかりました」と連絡をもらった時は、本当に安堵しました。

新しい電気保安会社の担当者が来社した時のことを今でも覚えています。「設備は古いですが、特に問題はありませんね」と点検後に言ってくれた時、「あ~、助かったわ」と心から感謝しました。

水道は意外にあっさり継続:特別な手続きなし

水道については、管財人から「特に問題なく継続できます」と報告を受けました。督促状は来ていましたが、管財人との交渉で継続利用が認められたようです。

「衛生面を考慮すると、完全に止めるのは現実的ではない」というのが水道局の判断だったのかもしれません。実際、破産手続き中でもトイレや手洗いは必要ですからね。

ガス停止の現実:冬の寒さとの戦い

一番困ったのがガス(プロパンガス)でした。管財人がガス会社に継続をお願いしたところ、「事務作業程度なら必要ないでしょう?」と言われ、あっさり断られてしまいました。

営業停止から約2週間後、本当にガスが止められました。まだ寒い時期だったので、手を洗う時やお茶を入れる時の水が冷たくて、毎回「ああ、ガスが使えたらなあ」と思いました。

些細なことですが、こういう日常の不便さが倒産の現実を実感させます。

業種別のインフラ継続事情と特徴

私の製造業での経験を踏まえ、業種によってインフラ継続の事情や交渉のポイントが大きく異なることが分かりました。ここでは主要な業種別の特徴をご紹介します。

製造業(私の会社のケース)

特徴:電気使用量が大きく、特殊設備が多い

  • 変電設備、受電設備の保安管理会社との契約が必要
  • 大型機械への電源確保(完全停止は困難)
  • 工場の最低限の照明・換気設備は継続されやすい
  • 危険物を扱う場合は安全管理上の電源確保が重要

私の経験: 電気保安会社の問題が最大の難関でした。製造業を検討中の方は、倒産時のリスクとして認識しておくべきでしょう。

飲食店・小売業

特徴:冷蔵・冷凍設備の緊急性が高い

  • 食材廃棄を避けるための緊急電源確保
  • 冷蔵・冷凍ショーケースの継続利用
  • 店舗の防犯システム維持
  • 比較的少ない電力で済むため継続されやすい

オフィス系業務

特徴:基本的なインフラ需要で交渉しやすい

  • サーバー室の電源・空調管理
  • セキュリティシステムの維持
  • 照明とコンセント程度で継続利用が認められやすい
  • ガスの必要性は低く、早期停止の可能性

医療・福祉関係

特徴:人命に関わるため最優先される

  • 医療機器の電源確保
  • 患者・利用者の安全確保
  • 継続利用の優先度が最も高い
  • 行政の介入もあり得る

倉庫・物流業

特徴:広大な施設での部分的利用

  • 大型施設での必要最小限エリアの電源確保
  • フォークリフト充電設備
  • 冷凍倉庫の温度管理(商品保護)
  • 防犯・監視システムの維持

以上が主要業種でのインフラ継続の特徴ですが、実際の対応は個別の事情や地域によって大きく異なります。具体的な対策については、破産手続きに詳しい弁護士や、同業種での倒産案件を扱った経験のある管財人にご相談することをお勧めします。

インフラ継続利用の仕組みと手続き

管財人の役割

破産管財人は破産開始決定後、速やかに各インフラ供給会社に連絡を取り、以下を交渉します:

  1. 供給継続の依頼
  2. 支払い条件の取り決め(破産財団から別途支払い)
  3. 必要最小限の供給範囲の確定

私の場合、管財人がすべての交渉を引き受けてくれたので、経営者としては「お任せ」状態でした。ただし、設備の特殊事情(変電設備など)は事前に詳しく説明しておく必要があります。

各インフラ会社の対応パターン

電気会社

  • 比較的継続に応じやすい
  • 事務作業に必要な最低限の照明・コンセント供給
  • 特殊設備がある場合の保安会社手配が最大の難関

水道局

  • 衛生面を考慮し継続されるケースが多い
  • トイレ・手洗い等の基本的な使用は認められる傾向
  • 自治体によって対応に差がある可能性

ガス会社

  • 「必要性が低い」と判断されやすい
  • プロパンガスは特に早期停止される可能性が高い
  • 都市ガスの方が継続されやすい傾向

事前に準備しておくべきこと

経営者・総務担当者向け

私の経験から、以下の準備をお勧めします:

  1. 各インフラ会社の連絡先と契約内容の整理
    • 契約者名義、契約番号、担当者連絡先
    • 特殊設備の保安管理会社情報も含める
  2. 設備の特殊事情を文書化
    • 変電設備、受水槽、エレベーターなど
    • 保安管理が必要な設備のリスト作成
  3. 必要最小限のインフラ範囲の検討
    • どのエリアの電気が最低限必要か
    • 完全に不要な設備の洗い出し

破産申請前にできること

  • 弁護士との相談時にインフラ継続の必要性を詳しく伝える
  • 管財人候補者に設備の特殊事情を事前説明
  • 緊急時に使用可能な設備の確認(非常用電源など)

よくある質問と注意点

Q: 未払い料金がある場合でも継続できる? A: 管財人が破産財団から別途支払うことで継続可能です。過去の債務とは別扱いになります。私の場合も1ヶ月分の未払いがありましたが、継続利用できました。

Q: どのくらいの期間継続される? A: 破産手続きの進行状況により異なりますが、通常は数ヶ月から1年程度です。私の会社では約8ヶ月間継続利用しました。

Q: 従業員が使用することは可能? A: 管財人の許可があれば、引き継ぎ業務等で従業員の立ち入りと最低限の使用は可能です。私も何度か従業員と一緒に書類整理で訪れました。

Q: 勝手に設備を撤去されることはある? A: 管財人の管理下にあるため、勝手な撤去はありません。ただし、安全上問題がある場合は停止される可能性があります。

実際に困った意外なポイント

鍵の管理問題

電気やガスの復旧作業で業者が来社する際、誰が鍵を開けるかという問題がありました。管財人か私が立ち会う事になったのですが、実際は全て私が出向いていきました。

季節要因の重要性

私の会社は冬に倒産したため、ガス停止の影響が大きかったです。夏場だったらそれほど困らなかったかもしれません。季節によって交渉のポイントも変わるでしょう。

破産管財人との打ち合わせと書類整理作業

まとめ

会社倒産時のインフラ供給は、管財人の交渉力と各供給会社の判断により決まります。完全に停止されることは稀ですが、ガスなど「必要性が低い」と判断されるものは早期停止の可能性があります。

私の経験では、電気保安会社の問題が最も予想外で時間を要しました。製造業など特殊設備を持つ企業は、この点を特に注意すべきです。

破産手続きでは従業員や債権者への対応が最優先となりますが、インフラ関連の手続きも意外に複雑で時間を要する場合があります。事前の準備と管財人との密な連携が、スムーズな手続きの鍵となります。

冬の寒い事務所で震えながら書類整理をした日々を思い出すと、今でも「当たり前にインフラが使えることのありがたさ」を感じます。

この記事が皆様の参考になりませんように。


この記事は実体験に基づく情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。具体的な手続きについては弁護士や管財人にご相談ください。

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