重要な注意事項
この記事は筆者の個人的な体験談であり、法的アドバイスではありません。破産手続きは複雑な法的手続きです。実際に検討される場合は、必ず破産専門の弁護士にご相談ください。地域や事案により手続きは大きく異なります。
会社の破産を経験した一経営者として、破産の決意から債権者集会に向けた準備までの実体験を記録として残します。同じような状況に直面する方の参考になれば幸いですが、あくまで一個人の体験談としてお読みください。
破産を決意するまで
私の会社は15期連続赤字、最盛期の売上19億円から3億円まで縮小し、最終的に資金ショートで破産に至りました。倒産に至る詳しい経緯については別記事で詳しく書いていますが、簡単に言うと「来月の資金繰りがもう無理」という状況での決断でした。
決意の瞬間は、自分で作成した資金繰り表を見て「当月はギリギリ、翌月は確実にアウト、半年後は絶望的」という現実を突きつけられた時でした。コンサルタントからは延命策の提案もありましたが、客観的データに基づいて延命は無意味と判断しました。

弁護士相談から準備期間(破産決意の3日後)
知人の弁護士に相談したのは、破産を決意してから3日後のことでした。この時点で「Xデー」(営業停止日)を2週間後に設定。この2週間で破産申し立ての資料準備を進めることになりました。
準備期間中は従業員に気づかれないよう、支払いタイミングの調整や資料整理を密かに進めました。「最近、支払いを変えるんですね」と従業員に言われた時は、「その方が良いと思ってね」と答えて乗り切りましたが、内心はかなり辛いものがありました。
Xデー当日(2週間後)
営業停止日の詳しい様子は別記事で書いていますが、午前10時に全従業員約30人を集めて「本日をもって営業を停止します」と告知しました。
同時進行で弁護士が裁判所への破産申し立て手続きを行い、債権者への通知をFAXで一斉送信。この日は本当に慌ただしく、まさに戦場のような一日でした。

告知後の空白期間(1週間)
Xデー当日は従業員や債権者への「告知・通知」であり、まだ裁判所への申し立ては行っていません。裁判所への正式な破産申し立ては、その1週間後に行われました。
この期間中は法的に宙ぶらりんな状態で、みんなには破産すると伝えたものの、法的にはまだ「営業中」という不思議な状況でした。実際は店を閉めているのに、法的手続きは何も始まっていないという、本当に中途半端な1週間でした。
この間に従業員の離職手続きを進めましたが、社会保険労務士と連携しながらの作業で、想像以上に煩雑でした。
開始決定と管財人面談(申し立てから9日後)
裁判所への正式申し立てから9日後、「破産手続開始決定」が下りました。同日、破産管財人との初回面談が設定されました。
申し立ての際に弁護士にはあらかた資料を渡してあったので、そこから管財人に情報はスライドしていました。初回面談では一から説明するというよりも、以下のような内容の確認作業でした:
- 会社設立からの沿革
- 倒産に至った経緯の詳細
- 主要な取引先との関係
- 資産の詳細(場所、状況、権利関係)
- 帳簿の保管状況
管財人の債権者集会準備作業(開始決定後約2ヶ月間)

ここからは管財人が債権者集会に向けて資料を作ったり、資産を売却したりする作業が本格化しました。
申立時に弁護士に渡していた主な資料:
- 仕入先元帳
- 得意先元帳
- 銀行の通帳(またはそれに類するもの)
- 未払費用の請求書
- 売掛伝票
- 賃金台帳
- タイムカード
- 出勤簿
- その他各種帳簿類
しかし、これらの資料はまだまだ不備が多く、管財人の作業は想像以上に大変そうでした。約2ヶ月間、管財人から毎日のように電話やメールで問い合わせがあり、私も資料探しや追加説明に追われました。
「この取引は何ですか?」「この資産はどこにありますか?」「この契約の詳細は?」など、過去数年分の取引について一つ一つ説明が必要でした。破産申し立て後の方が忙しいという現実を痛感した期間でした。
社会保険労務士との連携作業(Xデー直後から約1ヶ月)

管財人とは別に、社会保険労務士との手続きも並行して進めました。Xデー直後から約1ヶ月間、本当にバタバタした日々でした。
主な手続き:
- 健康保険証の喪失届
- 離職票の作成
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 源泉徴収票の発行
- その他従業員関連の各種手続き
従業員約30人分の手続きを一斉に行うため、書類の量も膨大でした。破産手続きと並行して進めるには相当な負担でしたが、従業員の生活に直結する重要な手続きなので手を抜くわけにはいきませんでした。
債権・債務の洗い出し作業
管財人との引き継ぎと並行して、債権・債務の確定作業も進めました。各債権者から提出される「債権届出書」と、自社の帳簿を突き合わせて正確な金額を確定していきます。
この作業で意外な発見もありました:
- 利息の計算違いで金額に差異があるケース
- 記録にない古い取引の存在
- 逆に先方の計算ミスを発見することも
「破産」というと派手なイメージがありますが、実際は帳簿や伝票とにらめっこする非常に地道な事務作業が延々と続きました。
資産処分の現実

債権・債務がある程度固まってくると、資産の処分方法を検討する段階に移ります。私の会社の場合、換価対象は土地、建物、設備、備品、商品など多岐にわたりました。
全てをまとめて買ってくれる業者などいないため、管財人は上手な切り分けをして、それぞれを廃棄せずに換価できる方法を模索していました。特に商品については、経時で価値が変化するものだったため、なおさら慎重な検討が必要でした。
債権者集会までには、各資産の処分方向性が示せるのではないかという見通しでした。
債権者集会に向けた準備(約3ヶ月後開催予定)
債権者集会の日程は、破産申し立てから約3ヶ月後に設定されました。それまでに債権・債務の確定、資産売却の方針決定、配当見込みの算出などを完了させる必要があります。
この期間中、管財人との打ち合わせは設備や商品の処分についてが中心でした。日々、管財人からの問い合わせ対応や資料探しに追われ、非常に実務的で忙しい毎日が続いていました。
体験者としての率直な感想
破産手続きは、想像していたよりもはるかに複雑で時間のかかるものでした。
弁護士からは「管財人が決まれば一段落ですよ」と言われていて、確かに精神的には中途半端な状態から抜け出し、一歩前に進んだ感覚はありました。メインプレイヤーが自分ではなく管財人に移ったという点も、大きな変化でした。
しかし現実には、「申し立て=終了」ではありません。そこから本格的な作業が始まりました。特に管財人とのやり取りは約2か月間、ほぼ毎日のように続き、破産申し立て後の方がむしろ忙しいと感じたほどです。
専門家に任せられた安心感はありつつも、この2か月間は精神的にも体力的にも非常にハードな日々となりました。
最後に
この体験談が、同じような状況に直面している方の参考になれば幸いです。ただし、繰り返しになりますが、これはあくまで一個人の体験談です。
破産を検討されている方へ:
- 必ず破産専門の弁護士に相談してください
- 地域や事案により手続きは大きく異なります
- 一人で抱え込まず、家族や専門家に相談を
- 時間が経つほど選択肢は少なくなります
皆さんがこのような体験をしなくて済むことを心から願っています。しかし、もし同じような状況に直面した際は、一歩ずつ確実に前に進んでいくことが大切です。
※この記事は2025年の筆者の体験に基づいて記載しており、法改正や制度変更により内容が変わる可能性があります。最新の情報については、必ず専門家にご確認ください。
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