企業の資金調達において、不動産に次ぐ担保手段として動産担保が利用されることがあります。これは、土地や建物といった不動産以外の財産、具体的には商品在庫や機械設備、売掛債権などを担保にする制度です。
この記事では、動産担保の基本的な仕組みから、企業が倒産した場合に担保がどのように扱われるのか、さらに経営者や債権者が知っておくべきリスクについて、客観的な視点から解説します。
動産担保が選択される背景
資金調達の際、多くの企業はまず不動産担保を検討します。しかし、不動産だけでは十分な融資を受けられない場合や、すでに不動産を担保に出し尽くしている状況では、別の担保手段が必要になります。
特に、特定の商品在庫に大きく依存する事業や、仕入先からの与信を維持したい場合、動産担保が有効な選択肢となり得ます。動産担保は、以下の特徴を持っています。
- 継続性: 一度契約すると、通常は自動更新される。
- 対象範囲: 在庫の増減に関わらず、契約時点の全在庫が担保対象となる。
- 手続きの簡便さ: 不動産担保に比べ、比較的容易に設定可能。
これにより、企業は事業活動を継続しながら、資産を活用した資金調達や与信の維持が可能になります。

倒産時の動産担保:債権者による担保権実行
企業が倒産に至った際、動産担保が設定された財産はどのように扱われるのでしょうか。この局面で、最も重要なのは担保権実行の仕組みです。
担保権実行とは、債務者(企業)が返済不能になった場合に、債権者(貸し手)が担保物件を処分し、債権を回収する法的手続きです。動産担保の場合、特に以下の点が重要となります。
「全部取得」の原則
動産担保の実行では、債務額に関係なく、担保に設定された動産すべてが債権者の所有物となります。たとえ担保物の価値が債務額を大きく上回っていても、その所有権はすべて債権者へ移転します。
この所有権の移転は、債権者から管財人(倒産手続きを管理する弁護士)へ「担保権を実行する」と意思表示された時点で、即座に発生します。

債権者側のリスク:管理責任の発生
担保権を実行した債権者は、担保物(在庫など)の所有権を得るのと同時に、その管理責任も負うことになります。これは、一見有利なように見えて、以下のようなリスクを伴います。
- 保管・維持費: 倉庫の賃料や商品の保管にかかる費用。
- 処分費用: 売れ残りや品質劣化が進んだ商品の廃棄費用。
- 在庫価値の変動: 帳簿上の価値と実際の市場価値が異なる場合、期待した金額を回収できない可能性。
特に、在庫の品質が低かったり、処分に費用がかかるような「不良在庫」だった場合、債権者はかえって損失を被る可能性もあります。このため、債権者には担保権を実行せずに放棄するという選択肢も存在します。
動産担保を理解するための基礎知識
動産担保の種類
動産担保には、主に以下のような種類があります。
- 商品在庫担保: 製品、商品、原材料などを担保とします。価値が流動的で評価が難しい場合があります。
- 機械設備担保: 生産設備や車両など、比較的価値が安定している動産を担保とします。
- 売掛債権担保: 将来入金予定の売掛金を担保とします。
他の担保制度との比較
項目 | 動産担保 | 不動産担保 | 人的保証 |
対象 | 在庫、機械など | 土地、建物 | 個人の信用 |
価値の安定性 | 変動しやすい | 高い | 個人の財産状況による |
実行時の処理 | 現物取得 | 競売など | 保証人への請求 |
手続き | 比較的容易 | 複雑 | 契約のみ |
まとめ:動産担保の実態と適切な判断

動産担保は、企業経営において有効な資金調達手段となり得ますが、その仕組みを十分に理解しておくことが重要です。
- 経営者が知っておくべきこと: 担保権が実行された場合、「全部取得の原則」により、債務額に関係なく担保物の所有権すべてが債権者に移転することを認識しておく必要があります。また、契約時には、担保対象や評価方法、実行条件を明確に確認することが不可欠です。
- 債権者が留意すべき点: 担保権の実行は、債権回収の機会を得る一方で、管理責任や処分費用といったリスクを伴います。安易な実行は避け、担保物の価値を正確に評価することが求められます。
動産担保は、適切に活用すれば企業にとって大きなメリットをもたらします。しかし、そのリスクを理解し、専門家(弁護士や公認会計士など)の助言を得ながら、賢明な判断を下すことが不可欠です。
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