【倒産の相談】弁護士に渡したバトン|判断を終えた経営者

破産・倒産の手続き

多くの経営者は、弁護士に相談すれば流れが変わる、何か新しい選択肢が出てくると期待します。しかし実際には、相談に行く前の段階で、すでに終わっている判断があることも少なくありません。弁護士相談は、判断を「作る」場ではなく、「前に進める」場になることがあります。

これは、相談の”早い遅い”を論じる記事ではありません。

弁護士に行く前に、すでに終わっていた判断

弁護士に相談する前に、経営者の中ですでに決まっている判断があります。

私の場合はXデーまで決めて、相談に行きました。会社を畳むという決断は、弁護士に会う前に終わっていたのです。

弁護士に相談したから倒産を決めたのではなく、倒産を決めたから弁護士に相談したという順番でした。判断が先、相談は後です。

実際には、倒産を決めたあとに弁護士へ行くケースもあります。相談が遅いのではなく、判断が先に終わっているだけです。

弁護士に行っても、判断は代行されなかった

弁護士に相談すれば、破産かどうかを決めてくれる、進むべき道を示してくれる、正解を教えてくれる――そう思っている人も多いかもしれません。

しかし弁護士が示すのは、判断そのものではなく、判断した結果に対する選択肢と手続きです。

私自身は、自己破産が必要かどうかは、相談に行った時点では分かっていませんでした。実質的に、自己破産が避けられない状況だと説明されました。

弁護士は私の代わりに決断してくれるわけではありません。すでに決まっている判断を前提に、その後の進め方を整理する人でした。

弁護士が主導したのは、判断ではなく段取り

弁護士が主導したのは、倒産までのスケジュールと、経営者本人がやるべき具体的なタスクでした。

Xデーまで2週間、怒涛のスケジュールが組まれました。役割分担が明確になり、何をいつまでにやるべきかがはっきりしたのです。

それまでは漠然と「終わらせなければ」と思っていただけでしたが、弁護士と話したことで、やるべきことが具体的なタスクとして見えるようになりました。

判断から離れ、「作業担当」になったという転換

弁護士に主導権を渡した時点で、私の役割は変わりました。

ひたすらデータ集め、資料集めでした。たとえば決算書や資金繰り表などを、弁護士の指示通りに集めていく作業です。

それまでの私は、何をどう判断するかを常に考える立場でした。しかしこの時点から、指示されたことを正確にこなす立場に変わったのです。判断フェーズから作業フェーズへの移行が起きました。

判断から解放されることが、結果的に良かった理由

弁護士に相談するまでの私は、ずっと「判断する側」にいました。
倒産するのか、しないのか。
誰に何を伝えるのか。
どこまで粘るのか。

希望と現実の間を行き来しながら、毎日どこかで判断を続けていました。

弁護士に実務を任せた瞬間、その立場が変わりました。
正直に言えば、少しの喪失感はありました。
しかし同時に、「もう自分が何かを決めなくていい」という感覚が、思っていた以上に大きな変化をもたらしました。

この切り替えによって、頭の中から余計な希望や迷いが消えていきました。
「もしかしたら別の道があるのではないか」と考える余地すらなくなったのです。

最後の始末に向けて、自分に割り当てられた作業だけに集中できました。
判断を伴わない作業に没頭できたことで、感情を挟まず、淡々と前に進むことができました。

もしこの段階でも私が判断を握り続けていたら、
中途半分な期待や後悔に引きずられ、時間も精神力も、もっと消耗していたと思います。

指示を待つ側になることは、経営者にとっては敗北のように感じるかもしれません。
しかし私にとっては、それが倒産という局面を最後までやり切るために必要な、役割の切り替えでした。

まとめ

弁護士相談の価値は「判断を早めること」だけではありません。

すでに終わっている判断を前提に、進めるための存在です。行く意味は、置かれているフェーズで変わります。

もし弁護士に相談しようか迷っているなら、「何を決めてほしいのか」ではなく、「自分の中で、すでに何が終わっているのか」を一度点検してみてください。

それがはっきりしていれば、弁護士相談は「判断の場」ではなく「前に進むための場」になります。

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