年金の繰上げ受給を検討していると、必ずこんな情報にたどり着きます。
「損益分岐点は78歳」「減額されたら一生続く」「一度決めたら取り消せない」
確かにその通りです。計算上は65歳まで待った方が得になる可能性が高い。これは事実です。
でも私は、63歳で迷わず繰上げ受給を申請しました。そして今も、一度も損したとは思っていません。
損すると言われても迷っている人へ。後悔するのではないかと不安な人へ。この記事はそういう人に向けて書いています。
損益分岐点の話は、余裕がある人向けの話
損益分岐点78歳という計算は、こういう前提で成り立っています。
「65歳まで待てる人が、どちらが得かを検討する」
仕事があって収入がある人なら、年金をもらう必要はそもそもありません。資産に余裕がある人なら、65歳まで待って満額もらう方が長い目で見れば有利です。
では切迫した状況にいる人はどうか。倒産して収入がゼロになった私のような人間には、78歳までの計算など関係ありませんでした。
土壇場の資金繰り、それが得意技だった
2025年の春、経営していた製造業の会社が破産申立てを行いました。約30人の従業員、22年間の経営に幕を下ろした瞬間です。
破産手続き中は、しっかり働こうという状態ではありませんでした。管財人との面談、書類の準備、債権者集会。精神的にも時間的にも余裕がない状況が続きます。アルバイトを探してはいましたが、フルタイムで働ける環境にはありませんでした。
これは破産を経験した人にしかわからない感覚かもしれません。でも同じ状況にいる人なら、きっとわかると思います。
収入はゼロになりました。経営者には失業保険がありません。手元にあった生活費の蓄えは4〜5ヶ月分。冷静に計算すると、このままでは確実に生活費がショートします。
会社の資金繰りと同じ状況が、今度は個人に襲いかかってきたのです。
実は私、資金繰りは得意でした。倒産前の5年くらいは、何度も修羅場をくぐってきました。そのときの感覚と同じです。必要なキャッシュをどこから、いつまでに確保するか。理屈より現実です。
答えはすぐに出ました。年金の繰上げ受給を申請する。それだけです。
月2万円欲しいならバイトをすればいい
繰上げ受給で減額される金額は、人によって異なりますが、月数万円程度です。
「一生、月2万円減額されますよ」と言われて、とっても損をする気がする人もいるでしょう。正直に言います。月2万円欲しいだけなら、バイトをすれば2日か3日で稼げます。
繰上げ受給が必要だという事はそういうレベルの話ではありません。
繰上げ受給が必要な人・不要な人
正直に整理します。
繰上げ受給が必要な人
- 自力で生活費が稼げなくなった人
- 誰からも援助して貰えなさそうな人
- 手元の資金が底をつきそうな人
繰上げ受給を急がなくていい人
- 仕事があって収入がある人
- 65歳まで生活できる資産がある人
- 配偶者加給年金(年間約40万円)を受け取れる可能性がある人
シンプルです。今必要かどうか、それだけです。
※配偶者加給年金を受け取れる可能性がある人は、繰上げ受給によってその権利が消滅する場合があります。申請前に年金事務所で必ず確認してください。
早めにもらって助かった。一度も損したと思わない。
繰上げ受給を始めてから、損したと感じた瞬間は一度もありません。
65歳まで待つ事にしていたら、あの時期をどう乗り越えていたのか。年金が入ってきたことで、精神的にも生活的にも助かりました。
「繰上げをせずに65歳から年金生活が始まったら、裕福だとか幸せだとか感じられるのか。」
私にはわかりません。でも63歳で申請して、早めにもらい始めたことは正解だったと思っています。
減額されて計算上は損かもしれない。でもあの状況で必要な決断をした。それだけのことです。
迷っている人へ。今必要なら、迷う意味はない。
まずはねんきんネットで、自分が繰上げ受給した場合の受給額を確認してみてください。動き始めると、迷いは消えます。
損益分岐点の計算をしている時間があるなら、年金事務所の予約を取ってください。
予約はいつも混んでいます。手続きから受給開始まで数ヶ月かかります。申し込んでからでは遅い、と感じるくらいのタイミングで動き始めるくらいがちょうどいいです。
年金の繰上げ受給は、損得で判断するものではありません。今、必要かどうか。それだけで判断していいと思います。
私は一度も後悔していません。
※年金繰上げ受給の手続きの詳細や、自己破産との関係については別の記事で詳しく書いています。あわせてご覧ください。
【免責事項】この記事は、筆者の個人的な体験をもとに書いたものです。年金の受給額や損益分岐点は個人の状況によって異なります。繰上げ受給の判断は、年金事務所や専門家にご相談のうえ、ご自身の責任でお決めください。
詳細については、日本年金機構の公式サイトをご確認いただくか、お近くの年金事務所へご相談ください。
【執筆者について】戦前創業の製造業を3代目として継承し、22年間経営。2025年に会社倒産・自己破産を経験。現在は年金とアルバイトで再出発中。きれいごとは言いません。

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