会社が破産したら、社長ですら自由に会社に出入りできなくなるのでしょうか? 私の答えは、「可能だが、想像以上に孤独で困難」です。
私は実際に会社の破産を経験した元経営者です。この記事では、破産手続き中の物理的・精神的な困難の実態と、そこから学んだ具体的な教訓をお伝えします。法律的な事実だけでなく、当事者にしか分からない感情や、予期せぬ困難への備えについても率直に語ります。
この記事を読むことで、破産手続き中に社長が直面するリアルな困難を知り、もし同じような状況に陥ったときの心の準備ができるはずです。
Part 1:結論と法的な実態
会社への出入りは可能か?:結論と法的な立ち位置
結論から言えば、破産手続きが始まっても、社長が会社に出入りすることは法的に可能です。ただし、それは「破産管財人の業務協力」という限定的な目的のためです。
破産管財人とは、裁判所が選任する弁護士で、会社の財産や負債を調査・整理し、債権者に公平に分配する役割を担います。社長の役割は、この管財人の調査に協力すること、つまり財産や負債に関する書類や情報を提供することに限定されます。
協力期間のリアル:私が会社に通った2ヶ月間
実際、私は破産開始決定後、約2ヶ月間は週3〜4回、会社に通っていました。管財人が資産や負債を整理するために必要な書類を探す作業を手伝うためです。
引き出しの奥にある書類、金庫の資料、細かなメモに至るまで、管財人の調査に必須なものを一つひとつ探し出す作業は、想像以上に骨の折れるものでした。特に売掛金に関する資料の整理は困難を極めました。請求書、入金記録、取引先とのやり取りなど、散在する情報をまとめる作業は、精神的にも体力的にも消耗するものでした。
しかし、この作業自体よりも私を阻んだのは、「移動手段の壁」と「メンタルの壁」という、2つの大きな障壁でした。
Part 2:私が直面した二つの大きな障壁
障壁1:物理的な困難「移動手段の壁」

破産が決定すると、会社名義の資産はすべて破産管財人の管理下に置かれます。それまで使っていた会社名義の車も即座に管理対象となりました。自己破産も視野に入れていたため、個人で新しく車を持つことも現実的ではありません。
結局、私の唯一の移動手段となったのは、娘から譲り受けた中古の自転車でした。会社まで片道40〜50分。雨が降れば出かけることもできません。かつてのように「ちょっと会社に行ってくる」とは言えない状況が、私の足を重くしました。
しかし今振り返ると、この自転車通勤は意外なメリットもありました。それまでは車での移動と事務所での座り仕事ばかりで、運動不足が気になっていました。片道40〜50分の自転車移動は、結果的に健康的な運動となり、心身のバランスを保つ助けになったのです。
【教訓】 倒産を視野に入れるなら、「移動手段の確保」は最重要課題の一つです。個人名義の自転車や原付バイク、あるいは公共交通機関のルートを事前に確認しておくことをお勧めします。
障壁2:精神的な困難「メンタルの壁」
移動手段よりもはるかに辛かったのは、精神的な負担でした。
会社の破産情報が広まると、取引先や元従業員、近隣住民など、さまざまな人が様子を見に来ます。彼らと顔を合わせることが怖かった私は、営業停止直後、人が少ない夕方や夜に忍び込むように会社に通うようになりました。
会社にいる間は電気を消し、カーテンを閉め、外から見えないように細心の注意を払いました。会社の前に車が停まる音が聞こえるたび、「誰か来た?」と心臓が跳ね上がり、ビクビクする日々。鍵がガチャガチャと動く音がすれば、「襲われるのでは?」とさえ感じるほどでした。
この恐怖心の根底には、社会的な「負い目」と「罪悪感」がありました。かつては当たり前に通っていた自分の会社なのに、破産後はそこにいること自体が罪悪感や不安を呼び起こしたのです。誰かに見られているのではないか、批判されているのではないか、そんな思いが頭から離れませんでした。
さらに孤独だったのは、会話する相手が弁護士と破産管財人だけだったことです。友人や家族にも話しにくい状況で、心の内を吐き出す場所がありませんでした。私は会社とは関係のない人とこのブログについて話すことで、何とか心のバランスを保っていました。
Part 3:この経験を乗り越えるために
【元社長が推奨】倒産前に必ず準備すべきこと 3選

私の経験から、もし倒産を視野に入れなければならない状況にあるなら、以下の3つを準備することを強くお勧めします。
対策1:移動手段(足)の確保と活用
会社名義の車は破産管財人の管理下に置かれます。個人名義の移動手段を確保しておきましょう。
- 個人名義の自転車や原付バイク
- 公共交通機関のルートと時刻表の確認
- 徒歩圏内での作業が可能かどうかの検討
私の場合、自転車は健康維持にも役立ちました。破産という極度のストレス下で、定期的な運動は心身の健康を保つ重要な要素となります。
対策2:破産管財人との協力体制を整える準備
管財人の調査に必要な書類を迅速に提供できれば、協力期間を短縮できます。
整理しておくべき書類:
- 勤怠に関する資料(出勤簿、タイムカード)
- 売掛金・買掛金に関する資料
- 契約書類、請求書、入金記録
- 資産目録、負債一覧
私の場合、勤怠資料は日頃からタイムラインで整理していたため比較的スムーズでしたが、売掛金の資料整理には非常に苦労しました。日頃からの書類整理が、いかに重要かを痛感しました。
対策3:心理的な相談先の確保
破産手続き中、会話する相手が弁護士と管財人だけという状況は、想像以上に孤独です。
- 弁護士以外の相談相手を確保する
- 家族や信頼できる友人に状況を共有する
- 専門カウンセラーや支援団体の利用も検討する
- 匿名でも良いので、本音を話せる場所を持つ
私はブログという形で自分の経験を言語化することで、心の整理をつけていました。どんな形でも良いので、感情を吐き出せる場所を持つことは、メンタルヘルスの維持に不可欠です。
時間の経過と心の変化
時間が経つにつれ、状況は少しずつ変化しました。不動産や商品の処分が始まると、会社にはさまざまな人が出入りするようになり、次第に「隠れる」必要がなくなりました。
それでも、一人で会社にいるときに突然の訪問者にドキッとすることは少なくありませんでした。
破産は、私の日常を根底から変えてしまいました。かつての当たり前だった「会社に行く」という行為が、こんなにも不便で心をすり減らすものになるとは、想像もしていませんでした。しかし、必ず終わりは来ます。今、この文章を書いている私は、あの暗いトンネルを抜け出すことができました。

まとめ
倒産後の会社への出入りは、物理的にも精神的にも決して楽なものではありません。それは法的に可能であっても、日常を根底から変える困難な体験です。
しかし、もし同じような状況に直面したとき、この記事が少しでも心の準備や具体的な備えの参考になれば幸いです。
【元社長からの提言】もしもの時に絶対にしてほしいこと
最後に、経営者の皆さんへ伝えたい、最も重要な提言です。
1. 倒産の危機を感じたら、コンサルタントよりも弁護士に早期相談すること
経営コンサルタントは事業の改善を支援しますが、法的な危機に対しては弁護士の専門知識が不可欠です。早期の相談が、より良い選択肢を残すことに繋がります。
2. 経営がピンチなら、早い段階で大胆な手を打つこと
状況が好転することを待ちすぎず、思い切った決断を下すことが、後の傷を最小限に抑える唯一の道です。
この経験が、あなたにとって参考になるような状況が訪れないことを、心から願っています。
【関連情報】
このブログ(https://koidenoboru.com/)では、倒産を乗り越えた元経営者としての再起の道のりや、その過程で学んだ教訓を綴っています。
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