試験監督のバイトを始めて、もう数ヶ月になります。仕事自体より、意外なところが辛いと感じるようになってきました。
最初はindeedで見つけた1社だけでしたが、今は3社からの募集に対応して働いています。応募すること自体は、もう珍しくありません。
先日も、新しい派遣会社から案内が届きました。試験監督の募集です。条件も悪くない。応募しようと思いました。
でも、ある場面で手が止まりました。
履歴書的な入力画面
応募のメールから派遣会社のサイトに飛ばされると、登録フォームが出てきます。
氏名、住所、連絡先。ここまでは問題ありません。
年齢を書く欄も、もう慣れました。60代と書くことに抵抗はなくなりました。かつては採用する側だったのに、今は年齢でフィルターにかけられる側です。
問題は、その次です。
「前職の会社名」 「仕事内容(できるだけ詳しく)」 「勤務していた期間」 「従業員規模」
試験監督のバイトに、これが必要なのかと思いながらも、入力欄は空白のまま待っています。
正確に書こうと思えば、いくらでも書けます。社名も、事業内容も、従業員数も。22年間経営していたのですから、説明できないはずがありません。
特に「従業員規模」という欄を見ていると、妙な気持ちになります。かつて雇用していた人数を、今、一人で試験監督をする自分が入力する。その距離感が、うまく飲み込めませんでした。
そして、書いているうちに、理由のはっきりしない辛さが出てきました。
書けるけど、書きたくない
嘘を書きたいわけじゃありません。盛りたいわけでもありません。
ただ、書いていると「これは今の仕事に関係あるのか?」という気持ちになってくるのです。
試験監督のバイトに応募するのに、製造業の社長だった経歴を詳しく書く意味があるのか。従業員が何人いたかを書いて、何が伝わるのか。
書きながら、だんだん自分でも分からなくなってきました。
そして、ブラウザを閉じました。
職歴が”過去形”になる感覚
社長だったのは事実です。22年間、そう名乗ってきました。
でも、それは「過去」です。
職歴の詳細を書こうとすると、その距離感が浮き彫りになります。
「経営者」「管理職」と書いてみても、自分の中で次の質問が浮かんできます。
「で、どうなったのですか?」
つらいのは、肩書きを失ったことではなくて、職歴を説明しにくくなることなのかもしれません。
その日の午後
ブラウザを閉じてから数時間後、今メインで働いている派遣会社から連絡が入りました。
翌月の試験監督の案件が2日分、決まったとのことでした。
正直、嬉しい、とても嬉しい。過去の肩書が評価されたのではなく、今の働きぶりが否定されてないと思えるのです。
仕事をしている中で、前職について詳しく聞かれたことは、一度もありません。
必要なのは、前職の詳細ではなく、今できることだけでした。
今思うこと
倒産を経験して、失ったものはたくさんあります。
でも、応募フォームで職歴を説明しにくくなる。
これが、思いがけず辛いことの一つでした。
社会は職歴を前提に作られています。履歴書も、応募フォームも、そういう設計になっています。
だから、そこに自分を当てはめようとすると苦しくなるのです。
職歴を書く欄が、一番つらい。
それは、過去を否定したいからではありません。
ただ、今の自分との距離が、そこに表れてしまうからです。


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