15期連続赤字、売上19億円から3億円へ縮小した製造業の元経営者が、中小企業活性化協議会を利用した4ヶ月間の実録です。費用50万円、3回のバンクミーティング、そして1年後の倒産。計画が実現しなかった理由と、それでも得られた教訓を包み隠さず公開します。
中小企業活性化協議会とは?(役割・対象・費用)
中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)は、経済産業省所管の公的機関で、全国の都道府県に設置されています。
主な役割:
- 財務的に困難な状況にある中小企業の事業再生支援
- 金融機関との調整(リスケジュール交渉など)
- 中立的な立場での再生計画策定
利用対象:
- 債務超過または債務超過の恐れがある中小企業
- 複数の金融機関から借入がある企業
- 自力での金融機関調整が困難な企業
費用: 初回相談・アドバイス(第1次対応)は無料です。事業再生支援など第2次対応に進む場合、外部専門家への費用が発生しますが、一定要件を満たせば費用の一部が補助されます。具体的には、専門家に対する支払費用の2/3が補助される制度があります。
私のケースでは: 診断士チームへの報酬として約50万円を直接支払いました。
銀行担当者から勧められた経緯

私の経営状況:
- 15期連続赤字
- 売上は最盛期19億円→3億円まで縮小
- 複数回のリスケジュール実施済み
地方銀行の担当者から「協議会を使って、抜本的な再生計画を立てませんか?」と提案されました。
銀行側の事情(私の推測):
- 銀行としても支援の姿勢を示したい
- 公的機関の関与で、本部への説明がしやすくなる
- 複数の金融機関(地銀・公庫・保証協会)を一度に調整できる
私も「何かヒントになれば」と思い、利用を決めました。
活性化協議会での4ヶ月間の流れ:3回のバンクミーティング

協議会のチーム構成:
- 統括の中小企業診断士
- 公認会計士(財務分析担当)
- 実務担当の中小企業診断士
全体スケジュール:
キックオフ → 2ヶ月 → 報告会 → 2ヶ月 → 発表会(承認)
第1回: キックオフと顔合わせ
参加者:
- 地方銀行、日本政策金融公庫、信用保証協会の担当者
- 協議会メンバー2名(主催)
- 私(社長)
内容:
- 協議会の役割とスケジュール説明
- 各金融機関の現状認識共有
- 今後の資料提出依頼
第2回: 会社内情の調査報告会(2ヶ月後)
参加者: 同上
内容:
- 決算書、資金繰り表の分析結果報告、デューデリジェンス
- 会社の問題点の洗い出し
- 今後の再生計画の方向性提示
診断士の指摘:
- 売上減少の構造的問題
- 固定費の高止まり
- 営業力の不足
私の印象: 「言われなくても分かっている内容」。ただ、第三者の目で整理されたことで、金融機関への説明資料としての価値はあると感じました。
第3回: 再生計画発表会(さらに2ヶ月後=承認)
参加者: 同上
内容:
- 再生計画書の発表
- 各金融機関のリスケジュール承認
- 半年後・1年後のフォローアップ確認
計画の内容(概要):
- 3年間での黒字化
- 売上回復のための施策
- 固定費削減の施策
- 事業構造の見直し
私の印象: 計画書を見て「これ、本当に実現できるのか?」という疑念を感じました。
診断士の印象的な一言
計画書作成の途中で、担当診断士がこう言いました。
「御社の審議が通るための資料は作りますが、実際どうするかが問題です。」
この一言で、私は協議会の役割を理解しました。
診断士の立場:
- 金融機関が納得する計画を作る必要がある
- しかし実現可能性は、最終的には経営者次第
- 計画と現実のギャップは、どうしても生じる
これは診断士個人の問題ではなく、再生計画の本質的な難しさだと今は理解しています。
再生計画で実行した施策

出来上がった計画書は、正直「楽観的すぎる」と感じました。しかし「そうしないと審議が通らない」のも事実でした。
承認後、計画に沿って以下の施策を実行しました。
施策1: SNSでの知名度アップ(インスタグラム)
計画書の狙い: 認知拡大→新規顧客獲得
実際にやったこと:
- 週2-3回の商品・作業風景の投稿
- アンバサダーの募集
- フォロワーを1000人まで増やした
結果: フォロワーは増えましたが、売上には全く繋がりませんでした。知名度向上や売上につながるレベルではありません。
施策2: 印刷物の改善
計画書の狙い: 地域密着型企業としてのブランド価値向上
実際にやったこと:
- パンフレットなど印刷物のリニューアル
- 地元のデザイナーに依頼し、地元の文化や歴史をイメージしたデザインに
結果: 社内ではなかなか好評でした。ただし経費はかかりましたし、新規開拓には効果なし。
施策3: 支店の家賃交渉
計画書の狙い: 固定費削減で月10万円のキャッシュフロー改善
実際にやったこと: 大家さんに事情を説明し、月8万円の減額に成功
結果: 唯一、実効性があった施策でした。年間約100万円のコスト削減。ただし売上が19億円→3億円に落ち込んだ会社にとって、年間100万円では焼け石に水でした。
施策4: 事業構造の見直し(建物の1フロア開放)
計画書の内容: 複数フロアある会社の建物の1フロアを開放し、他社にレンタルする
社内の反応: 社内会議で提案したところ、「それは無理やろ」という反応。
実際: 片付けすら手につかず、実行できませんでした。
教訓: 現場の実態を知らない計画は、どれだけ立派でも絵に描いた餅です。
半年後の進捗報告会

報告内容:
- SNSではフォロワーが増加→インスタの施策は効果あり
- 印刷物も社内には好評
- 家賃削減も実現
ただし: 売上にはつながっていない
報告のトーン: 「計画の中で出来ることは進めています」という感じでした。
1年後の倒産
予定されていた最終報告会: 会社倒産により実現せず
承認から約1年後、会社は破産しました。
再生計画が失敗した根本的な理由(時間軸・構造的問題)

根本原因に手をつけられなかった:
- 売上減少の本当の原因: 業界の構造変化、新商品の開発や新規の顧客開拓に対する力不足
- これらを解決するには、事業モデルの抜本的転換が必要
- しかし資金も時間もなかった
施策と問題の時間軸のミスマッチ:
- SNS・印刷物: 効果が出るまで1-2年
- 資金繰りの限界: 数ヶ月
私自身の限界:
- 15期連続赤字で精神的に疲弊
- 新しいことに挑戦する気力が残っていなかった
それでも協議会を使う意味はあった
事業再生という意味では失敗でしたが、以下の点で意味はありました。
実際の効果:
- 協議会を使ったことで、倒産までの1年間、銀行は手を引かなかった
- 結果は出なかったが、新しい切り口での改善策を試すことが出来た
「やれることは全部やった」という納得感:
- 最終的に破産を選びましたが、「協議会まで使った」という事実が、私自身の納得につながった
活性化協議会が機能するケース・しないケース

協議会の公式情報によると、以下のような対象企業が想定されています。
収益力改善支援の対象: 新型コロナウイルス感染症の影響などで売上減少や借入金増大により、倒産・廃業・支払不能状態など有事に移行する可能性の高い中小企業など
事業再生支援の対象: 収益性のある事業を運営しているものの、財務上の問題などを抱えている中小企業など
対象外となる企業: 民事再生法等の法的整理に入っている企業、または申請手続きを行っている企業は対象になりません。ただし、そのような企業の保証人が保証債務の整理について相談することは可能です。
再生計画の基準: 実質的に債務超過の場合、再生計画成立後の最初に到来する事業年度開始日から5年以内をめどとして実質的な債務超過が解消され、対象企業の経常利益が赤字の場合、再生計画成立後に最初に到来する事業年度開始日からおおむね3年以内をめどとした黒字転換できることが基準とされています。
私のケースで機能しなかった理由:
- 15期連続赤字かつ債務超過状態という構造的問題
- 3年以内の黒字転換が現実的に困難
- 運転資金に時間的余裕がなかった(数ヶ月の猶予)
- 経営者の疲弊(判断力の低下)
【まとめ】元経営者が語る、活性化協議会に相談すべきタイミング
活性化協議会の仕組み自体はしっかりしており、時間的な余裕をもって取り組めば上手くいく可能性は十分あると思います。実績もあるのでしょう。
ただし、相談のタイミングが全てです。
私は15期連続赤字、売上3億円まで縮小した時点で協議会を使いましたが、これは完全に手遅れでした。
もし10年前に相談していたら、結果は違ったかもしれません:
- 売上がまだ10億円以上あった
- 赤字が5期程度で、まだ「一時的な困難」と見なせた
- 事業転換の選択肢があった
- 経営者としての気力も残っていた
私の経験から言える「相談すべきタイミング」:
- 赤字が3期続いたら: 「来期こそ黒字化」という希望的観測を捨てる
- リスケを検討し始めたら: 銀行に相談する前に協議会へ
- 売上が最盛期の半分になったら: 構造的な問題の可能性が高い
私は「まだ大丈夫」「来期こそ黒字化できる」と自分に言い聞かせ続け、決断を10年遅らせました。これが最大の失敗です。
迷ったら、まず相談を。初回相談は無料です。「まだ早い」と思うタイミングこそが、実は適切なタイミングです。
中小企業活性化協議会について詳しく知りたい方へ
活性化協議会は全国47都道府県に設置されています。お住まいの地域の協議会は、以下の公式サイトから検索できます。
中小企業活性化協議会 公式サイト
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/
初回相談は無料です。まずは気軽に問い合わせてみることをお勧めします。
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注意事項
※この記事は筆者の体験談であり、法的助言や専門的なアドバイスではありません。活性化協議会の効果は企業の状況によって大きく異なります。具体的な相談は、弁護士や認定支援機関、または協議会に直接ご相談ください。
資金繰りの選択肢を知っておくことの大切さ
経営の現場で資金繰りに悩んだ経験から、改めて思うのは「もっと早く選択肢を知っておけば」ということです。
私は当時、ファクタリングという仕組みをよく知らず、結果的にクレジットカードのキャッシングに頼ってしまいました。
もしその時に今の知識があれば、違う選択をしていたかもしれません。
もちろん、ファクタリングが万能の解決策ではありませんし、手数料も決して安くありません。しかし「選択肢として知っておく」ことは重要だと思います。
同じように資金繰りで悩む経営者の方に向けて、私が後から調べた情報をまとめた記事があります:
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👉 個人事業主・フリーランスにおすすめのファクタリング5社比較
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⚠️ これらの記事も専門家の監修は受けていません。利用を検討される場合は、必ず税理士・会計士等の専門家にご相談ください。


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