会社が倒産したら、離職票はもらえるのか。
結論から言います。もらえます。 しかも倒産による解雇は「会社都合」扱いになるため、失業給付は自己都合退職より手厚くなります。
ただし、現場は教科書通りにはいきません。
私は2025年に22年続けた会社を倒産させました。従業員は約30名。その全員分の離職票を、倒産の混乱の中で作りました。制度の話より先に、その時のことをお話しします。
そして、この記事は経営者としてどう動いたか、従業員はどう守られるか、両方の視点で書きます
社労士さんに電話した日のこと
倒産を決断した後、真っ先に連絡しなければならない相手のひとりが、ここ数年お世話になっていた社労士さんでした。
電話で「会社を倒産させることになりました」と伝えると、「え〜、そうでしたか!」と心底驚いた様子でした。当然です。突然の話ですから。
その日か翌日か、社労士さんはわざわざ会社まで来てくれました。今後のことを一緒に考えるために。
やるべき手続きや揃える資料の事など話しましたが、費用の話も出てきました。
社労士との契約は、翌月分を今月払う前払い方式です。会社がなくなれば契約も終わります。
「通常であれば、離職票の作成は1件5,000円の個別対応になります。30名分なら、15万円です。」
「これでは負担が大きすぎますので、会社は無くなってしまいますが、契約はそのまま継続して、来月分の25,000円をお支払いいただければ全部やりますよ」
そう言ってもらえました。
そして最後にこう言ってくれました。
「もう、最後までお付き合いしますよ」
正直、嬉しかったです。四面楚歌の気分の中で仲間を見つけた感覚でした。
問い合わせ対応が、じわじわとこたえた
離職票の手続きが進む中で、従業員からの問い合わせが続きました。
「手続きはちゃんと進んでいますから、安心してください」
それだけを伝え続ける日々です。管財人が選任されるまでは、問い合わせの窓口はこちらになります。夜に電話が来ることもありました。
経営者として当然の責任です。でも、体力的にも精神的にも限界に近い状態でその対応を続けるのは、正直しんどかったです。
きれいごとを言うつもりはありません。「最後まで責任を果たさなければ」という気持ちと、「もう限界だ」という気持ちが、毎日ぐるぐるしていました。
必要書類の収集が意外と大変だった
離職票の作成には、賃金台帳や出勤簿、労働者名簿などが必要です。
私は引き継いだ時点から書類整理には気を使っていたつもりでした。でも、いざ「全部揃えてください」となると、抜けが出てくるものです。
倒産の混乱の中で書類を探し回る作業は、ある意味で気を紛らわせてくれました。探している間は、余計なことを考えずに済みますから。それが救いといえば救いでした。
誰もいない事務所で、ひとりで封入作業をした
書類が揃ったある日、社労士さんから連絡が来ました。
「書類が出来上がりましたが、今日は会社にいらっしゃいますか?」
彼は今までどおりに確認してきました。悪気は全くないのはわかっています。でも、倒産した会社に「いらっしゃいますか?」と聞かれても居るわけありません。こういう何気ない言葉の方が、正面からの言葉よりも応えることがあります。
「今は会社には出ていないので、時間を指定してもらえれば向かいます」と答えて、書類を受け取りに行きました。
書類は全員分を郵送します。封入作業は、こっそりひとりでやりました。誰もいない事務所に入って、A4封筒に一人ひとりの書類を入れて、全員分を郵送する。シーンとした事務所の中で、黙々と作業しました。
従業員のためにきちんと最後までやらないと、という気持ちと、まったく生産性がない虚しい気持ちが半々でした。
制度のことも少しだけ
体験談ばかりでは不安な方のために、制度の基本だけ整理しておきます。
離職票は2種類あります。 離職票-1は雇用保険の被保険者であったことを証明するもの、離職票-2は離職理由や賃金支払状況が記載されたものです。特に離職票-2は失業給付の金額と日数を決める重要な書類です。
倒産の場合は「会社都合」になります。 これにより従業員は「特定受給資格者」として扱われます。通常の自己都合退職なら給付まで一定の給付制限期間がありますが、会社都合の場合は7日間の待期期間のみで給付が始まります。給付日数も手厚くなります。
手続きの期限は離職日の翌日から10日以内です。 法的義務です。倒産という状況でも免除されません。社労士や弁護士と連携して、できるだけ早く進めることが従業員のためになります。
まとめ:倒産時の離職票で伝えたいこと
倒産時の離職票手続きで、経営者側に私の体験から言えることはひとつです。
一人でやろうとしないこと。
社労士さんに早めに連絡を取り、状況を正直に話す。そこから道が開けることがあります。私がそうでした。
また、従業員の立場から言えば、会社が倒産しても離職票は必ずもらえます。会社都合での退職になりますから、ハローワークで失業給付の手続きをすれば、自己都合よりも早く・手厚い給付が受けられます。
倒産という状況は、経営者にとっても従業員にとっても、想像以上に消耗します。それでも手続きは粛々と進みます。専門家を頼りながら、一つひとつ片付けていくしかありません。
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※本記事は筆者個人の体験に基づくものです。実際の手続きにあたっては、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。


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